財務相の諮問機関、財政制度等審議会(会長・榊原定征=さだゆき=東レ特別顧問)が今後の税財政運営の方針をまとめた意見書の全容が17日、分かった。「令和時代の財政の在り方に関する建議」と題し「財政健全化どころか一段と財政を悪化させてしまった平成時代の過ちを繰り返すことは許されない」と財政再建の必要性を重ねて強調した。建議は19日に麻生太郎財務相に提出する。
建議は、財政の見通しに「甘い幻想や楽観論を振りまくことは厳に慎むべき」とし、10月の消費税率10%への引き上げに加え「財政悪化の最大の構造的要因」である社会保障改革を進めるべきだとも訴えた。
総論では、ギリシャ神話「セイレーンの誘惑」を引用。財政健全化の道のりを「難しい航海においては、誘惑に負けない強い意思が必要」とした。政府の債務残高が1000兆円を超え、少子高齢化が加速する中で財政の立て直しは容易ではないが、「果てしない航海でも、難破が確実な航海でもない。必ず辿(たど)り着く港があろう」との決意を示した。
生涯を通じた医療や介護など公的サービスの受益と税や保険料など負担総額が若年世代ほど負担超過となりかねない現行の社会保障制度を踏まえ「令和時代は将来世代へのツケ回しに歯止めを掛ける時代」と総括。まずは14・6兆円の赤字を見込む今年度の国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を令和7(2025)年度に黒字化する目標を達成するよう求めた。
同22(2040)年には昭和46~49年生まれの団塊ジュニア世代がすべて65歳以上になるのを踏まえ、2040年代半ばまでの長期推計に基づく国民的議論を促した。2月に財政に関して意見募集した結果も建議の一部として公表する。