政府は21日、令和元年版観光白書を閣議決定した。訪日客の地方での消費額が平成30年に1兆円を突破し、全都道府県に占める割合も約3割に達したと指摘。その背景として、地方でのスポーツ体験や温泉入浴といった「コト消費」への関心の高まりを挙げた。今年度も地方への誘客を促すため、農家や城などに宿泊する体験型宿泊の推進などを掲げた。
政府は東京五輪・パラリンピックが開かれる令和2年に訪日客を4千万人、消費額を8兆円に増やす目標を設定しているが、平成30年は27年比で消費額が30%増の約4兆5千億円と伸び悩んでおり、地方での消費額の拡大を目指している。
白書は、地方を訪れる訪日客数が三大都市圏だけを訪れる訪日客数に比べて1・4倍となるなど、順調に地方への訪日客が増加していると指摘。特にスキーやスノーボード、温泉入浴やサイクリングなどの「コト消費」を行うには、北海道や瀬戸内などが適しているため、地方への訪問率が高いという調査結果を示した。
一方、訪日客の増加が宿泊業の雇用や賃金の増加に貢献していると指摘。就業者数は24年からの6年間で約15%増加し、賃金も6年間で11%増加したと強調した。宿泊業の建設投資も各地で拡大し、工事予定額は6年間で約9倍に増加して1兆円を超えた。ただ、新規求人数が増加する中で、人手不足感は他の産業を上回るペースで高まり続けているとした。