
(写真:読売新聞)
【ニューデリー=浅野友美】インド海軍は、初の国産空母「ビクラント」が9月2日に就役すると発表した。ロシアから購入した空母「ビクラマディティヤ」とともに、インドの空母は2隻態勢となる。今年6月に3隻目の空母を進水させてインド洋への進出を強める中国を念頭に、インドは海軍力増強を図る。
ビクラントは全長262メートル、幅62メートルで、排水量は4万3000トン。2009年に起工され、13年の進水式を経て、21年8月以降に試験航海を重ねてきた。英国から引き渡された初代ビクラントは、1990年代に退役しており、今回就役する国産空母は2代目ビクラントとなる。
艦載機の発艦は、船首の勾配を利用する「スキージャンプ式」で、米原子力空母などのように、重い機体を短時間に飛ばすカタパルトは備えていない。
空母にはロシア製のミグ29戦闘機など30機が搭載可能で、11月にも試験飛行を始める予定だ。地元紙ヒンドゥスタン・タイムズによると、印政府はこのほか、米FA18スーパーホーネットや仏ラファール戦闘機の購入も検討している。
インドが海軍力を増強する大きな理由は中国だ。
中国ではこれまでに空母「遼寧」と「山東」が就役。今年6月に進水した3隻目の「福建」は、艦載機の短時間での発艦や重装備化を可能とする電磁式カタパルトを初採用している。空母は通常、3隻態勢になれば作戦と訓練、補修のローテーションで常時1隻の運用が可能になり、中国はこの態勢に着実に近づいている。
中国軍は空母を台湾有事のほか、将来的には重要なシーレーン(海上交通路)であるインド洋に派遣することも想定しているとみられる。インドの隣国スリランカでは南部ハンバントタ港の権益を獲得し、今月中旬に軍所属の調査船を入港させるなど活動領域を広げている。
印政府は、こうした中国のインド洋への進出を強く警戒している。印国防省幹部は本紙に対し、「インド洋のシーレーンを妨げられないために、インドも空母を増やすことは必要だ。中国が3隻保有する中で、インドも3隻目を視野に入れている」と述べた。