【上海=吉永亜希子】中国内陸部の長江流域を中心に続く記録的な猛暑と少雨で、電力不足だけでなく、農作物にも深刻な被害が出ている。習近平(シージンピン)政権が異例の3期目入りを見込む今年秋の共産党大会を控える中、長期化も懸念される異常気象が影を落としている。
湖干上がる
28日、中国・江西省南昌市で、干ばつにより干上がったカン江=ロイター
(写真:読売新聞)
江西省の現地からの報道では、省最大の湖である●陽湖(はようこ)が干上がり、湖底をさらけ出している様子が伝わる。同省の主要河川であるカン江も水量が極端に少ない状態となっている。(●は「番」に「おおざと」)
中国水利省によると、7月以降の少雨で、江西省のほか、長江流域の湖北省、四川省、重慶市など5省1市で約8200平方キロ・メートルの耕地と約83万人の農民が被害を受けている。中国社会科学院は、秋に収穫される米、トウモロコシ、大豆などの収穫量に影響が出るとの予測も示している。
新華社通信によると、27~28日、胡春華(フーチュンフア)副首相が江西省の農家を視察し、「農民への資金や物資支援を迅速に行い、食料生産の安定に努力しなければならない」と指示した。中央政府は、苦境に陥る農民らの不満が高まらないよう、湖北省や江西省などに相次いで対策費を投入し、収穫量への影響を抑えようとしているが、効果が上がるかどうかは見通せない状況だ。
工業に打撃
重慶市では、25日まで18日間連続で、40度を超える日が続いた。18日には、最高気温45度という記録的高温となった。隣接する四川省の気象局によると、省内の7月1日~8月15日の降雨量は例年の半分程度で、過去最少を記録した。
重慶市は、電力の15%を四川省の水力発電に依存する。水不足が招く電力不足に伴い、市内では徹底した計画停電が敷かれてきた。ネット上では、完全に消灯されて車内が真っ暗な市内の地下鉄の様子が動画で伝えられた。また、中国メディアによると、市内では90のダムが干上がり、約70万人が生活用水に事欠き、今月25日までに給水車が1500回以上出動したという。