深セン市内の通りに貼り出された、新型コロナの高リスク区域を示す警告(8月31日、ロイター)
【瀋陽=川瀬大介、広州=吉岡みゆき】10月の共産党大会を控えた中国で、新型コロナウイルス感染が再拡大し、約2100万人が暮らす四川省成都市が今月1日から事実上のロックダウン(都市封鎖)に入るなど各地で感染対策を強化する動きが広がっている。
トヨタ自動車など日系企業が多く進出する成都市は8月31日までの1週間に750人以上の市中感染者を確認したことを受け、1日夜から全住民に原則として自宅待機を命じ、4日までに計3回のPCR検査を受けることを義務付けた。生活必需品を購入するための外出は、各世帯で毎日1人だけ認めている。中国の大都市で全住民を対象にした封鎖が実施されるのは上海市以来で、現地に暮らす日本人女性(29)は本紙の取材に「上海のように長期化しないか不安だ」とため息をつく。
中国の感染者は6月下旬、連日数十人で推移していた。しかし、7月に感染力の強いオミクロン株の新系統が見つかり、8月上旬には観光客が多く訪れる南部の海南島や西部のチベット自治区で感染が拡大。衛生当局は先月の記者会見で早期の封じ込めを指示していたが、2日の感染者は1819人で、発生地が全国31の省・直轄市・自治区の25にまたがるなど各地に飛び火した。
各地では、習近平(シージンピン)政権が掲げる「ゼロコロナ政策」に基づく厳しい措置が取られた。3日には北京市に隣接する天津市で全住民約1400万人を対象にしたPCR検査が実施され、南部の広東省深セン市の主要部では外出制限が始まった。
ゼロコロナが住民生活や経済活動に与える影響は大きいが、党大会で3期目政権の発足をにらむ習政権に方針転換の気配はない。自身の誤りを認めることにつながるためだ。中国中央テレビは1日、新型コロナとの併存を目指す日米欧の対策を「災害」になぞらえ、自国の優位性を主張した。