
ロシア反体制派の指導者A・ナバリヌイ氏(右)と握手を交わすM・ソロコフさん
オランダ・アムステルダム(CNN) ミハイル・ソコロフさんは、ロシアの工作員が自分を見張っている可能性があることを理解している。ソコロフさん自身、同僚たちをロシア政府のために数年間スパイしていたと明かす。
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現在はオランダへの亡命を申請中だというソコロフさん。用心深くアムステルダムの運河周辺を歩きながら、CNNの取材に答える。情報提供者として採用されたこと、自らも加わっていた野党グループに対する裏切り、さらに国外へ脱出した理由を語った。
「彼らの言葉を信用するなら、彼らは米中央情報局(CIA)がロシアで革命を進めようとしていると本気で考えている。そしてナバリヌイ氏はCIAの工作員だと思い込んでいる」。ロシア連邦保安局(FSB)について、ソコロフさんはそう指摘した。FSBはソ連崩壊に伴ってできた国家保安委員会(KGB)の後進機関だ。「彼らは大量のリソースと活動を駆使して、ロシアでの革命勃発(ぼっぱつ)阻止を図る。国外に敵を探している」
FSBはまた、「躍起になって」誰がナバリヌイ氏の後継者になる可能性があるのかを把握しようとしていると、ソコロフさんは話す。ロシアの反体制派活動を率いるアレクセイ・ナバリヌイ氏は毒を盛られる被害に遭い、現在は刑務所に収監されている。
ソコロフさんの暴露により、今やロシア政府の治安機関による表に出ない活動にも光が当たるようになっている。ウクライナへの侵攻を受け、最近ではソコロフさんのようにロシアを脱出する人々が後を絶たない。
CNNはFSBとCIAに対し、今回の件についてのコメントを求めた。FSBから返答はなく、CIAはコメントを控えた。CNNは米国政府がロシアの反体制派の活動に関与しているとの見方について、信頼できる証拠も主張も確認していない。
学生からスパイへ
ソコロフさんはCNNの取材に答え、「普通の19歳の学生」だった2016年、初めて政治的な活動に関わったと語った。参加したロシア共産党は事実上、クレムリンの公認を受けた現代ロシアの野党勢力で、公共交通機関の運賃値上げといった問題に対するキャンペーンを展開している。
しかし一方でソコロフさんは、独自に反汚職の調査を地方当局者に対して開始していた。そうした活動は当局者の注意を引いた可能性があった。
さらに活動に従事する傍ら、徴兵義務を逃れたことでFSBから目をつけられたとソコロフさんは話す。
「入隊に携わる機関のトップに呼ばれてオフィスに行くと、そこにFSBの当局者がいて、自分の行動を一定期間追跡していたと告げられた。それから、FSBに協力するか2年間刑務所に入るか、どちらかを選ぶように言われた」
刑務所での虐待を恐れたというソコロフさんには、FSBとの取り引きをのむしか選択肢はなかった。