英政府通信本部(GCHQ)のフレミング長官=ロンドンで2019年2月14日、ロイター
英国で通信傍受などを担当する情報機関・政府通信本部(GCHQ)のジェレミー・フレミング長官は11日、ロンドンで講演し、ウクライナ侵攻を続けるロシア軍が「恐ろしいほどの人的犠牲」を出しているとの分析を明らかにした。ロシア国民もこうした状況を「理解し始めている」という。
フレミング長官は死傷者数などの詳細には言及しなかったが、「物資と弾薬が枯渇している状況を現場司令官も知っている」と指摘。そのうえで「囚人を援軍として使い、経験の浅い何万人もの徴集兵を動員していることは、絶望的な状況を物語っている」と述べた。
また、政権内部でプーチン大統領の作戦を修正する反対意見がほとんどないため、プーチン氏が「一か八か」の賭けのような判断を下しているとの見方を示した。その具体例として、ウクライナ南部クリミアとロシアを結ぶ「クリミア大橋」で8日に起きた爆発への報復の意味で、ロシア軍が首都キーウ(キエフ)を攻撃した作戦を挙げた。
GCHQは、国内の情報活動を担う情報局保安部(MI5)、対外活動担当の秘密情報部(MI6)と並ぶ英国の情報機関。前身組織が第二次大戦でナチス・ドイツの暗号通信を解読した実績があり、英国のシギント(通信傍受による情報収集)を支えている。【ロンドン篠田航一】