トランプ氏の召喚を決議 米議会襲撃事件の下院特別委
昨年1月の米連邦議会襲撃事件について調査している下院特別委員会は13日、ドナルド・トランプ前大統領に法的な効力のある召喚状を出し、証言を求めることを決めた。
特別委の民主党議員7人と共和党議員2人の全員が、トランプ氏(共和党)を召喚し、事件に関して文書や宣誓証言を要求することに賛成した。
ベニー・トンプソン議員(民主党、ミシシッピ州)は、「彼は自らの行動について答える必要がある」と主張。
副委員長を務めるリズ・チェイニー議員(共和党、ワイオミング州)は、「私たちには、この事態を引き起こした人物に直接答えを求める義務がある。そして、すべてのアメリカ人には、その答えを得る権利がある」と述べた。
召喚に応じない場合、トランプ氏は刑事訴追され収監される可能性がある。
召喚状は数日内に出される見通し。その中で、トランプ氏が召喚に応じる期限が示される。
■トランプ氏は応じない構えか
トランプ氏については、証言を拒否し、召喚について争うと、広く予想されている。同氏は特別委の調査を、民主党政権の「惨状」から有権者の目をそらすための策略だと非難している。
2024年大統領選への立候補の可能性を示唆しているトランプ氏は13日、自らのソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」(Truth Social)で、なぜ特別委が数カ月前に自分の証言を求めなかったと書いた。
「(特別委は)なぜ最後の最後まで、最終会合の最後の瞬間まで待ったのか」と、トランプ氏は問いかけ、「なぜなら、この委員会は私たちの国をさらに分裂させるだけの完全な『失敗』だからだ。ちなみに、私たちの国はひどい状況にある。世界中の笑いもの?」と投稿した。
特別委はこれまで、トランプ氏の首席戦略官だったスティーヴ・バノン氏も法律にのっとって召喚した。同氏はこれに応じず、今年7月に議会侮辱罪で有罪評決を受けた。
13日の特別委では、9回目となる公聴会が開かれた。公聴会はこれが最後になる可能性がある。
これまで公開されていなかった映像が上映され、議会が襲撃された当時、議員たちが避難する様子が示された。
その映像では、ナンシー・ペロシ下院議長(民主党)が、議会内の別の場所にいる議員たちがガスマスクを着けるよう指示されたと知らされ、ショックを受けた表情を見せている。
ペロシ氏や他の議員たちは、軍当局や近隣の州の知事に必死で電話をかけ、暴徒の撃退に協力するよう求めている。
ペロシ氏の電話からは、ジョー・バイデン氏の大統領選での勝利を認定する投票をいつ議場で再開できるのか、上院議長でもあったマイク・ペンス副大統領(当時)が説明しているのが聞こえる。
映像は、ペロシ氏に同行していた娘アレクサンドラさんが撮影した。
■大統領選敗北を認識か
この日の特別委では、トランプ氏が大統領選での敗北を認識しながら、それでも選挙が盗まれたとして陰謀論を奨励したとする証拠も示された。
特別委は、ホワイトハウス報道部長だったアリッサ・ファラー氏の証言を撮影したビデオを上映。同氏はその中で、大統領選の約1週間後に、トランプ氏がニュースを見ながら、「こんなやつに負けたなんて信じられるか?」と同氏に述べたとした。
特別委は、大統領選で敗北を認めなかったトランプ氏の「心の状態」に焦点を当てるとした。
特別委は1年以上にわたり、トランプ氏の子どもたちや側近、軍や警察のトップなど1000人以上の証人に聞き取り調査をしてきた。
特別委の規則は、所属議員に対し、調査結果に関する報告書の作成を義務付けている。報告書は12月に公表される見通し。
■共和党内でのけ者に
特別委の共和党委員のチェイニー氏と、アダム・キンジンガー議員(イリノイ州)は、党内でのけ者となっている。同党の保守派は両議員について、調査に参加したことを非難している。
チェイニー氏は、今夏のワイオミング州での共和党予備選挙で敗れた。キンジンガー氏は、来月の中間選挙に立候補しないことを決めている。
連邦議会襲撃事件では、これまでに850人以上が暴動に参加したとして訴追されている。
(英語記事 Capitol riot inquiry ordering Trump to testify)
(c) BBC News