アメリカ大統領選挙が佳境を迎える中、カマラ・ハリス副大統領への支持が伸び悩んでいる。最新の世論調査では、対立候補であるドナルド・トランプ前大統領に僅差で追い抜かれたとの結果も出ており、選挙戦は予断を許さない状況だ。
ハリス氏失速の兆候
ハリス氏の失速を裏付けるデータはいくつか見られる。賭けサイトではトランプ氏の勝利予想率が60%を超え、支持率でも逆転を許している。
専門家の見解
しかし、アメリカ政治に精通する上智大学の前嶋和弘教授は、「支持率数%の差は誤差の範囲内」と冷静に分析する。アメリカでは共和党支持者と民主党支持者が二分されており、この僅差は容易には覆らないと指摘する。
前嶋教授は、トランプ氏が銃撃事件に遭った際も、「トランプ氏を撃った銃は、共和党側が規制緩和したものであるにもかかわらず、共和党支持者はトランプ氏になびかなかった」と例を挙げ、両者の支持層の根強さを強調した。
ハリス氏への”中身不足”批判
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テレビ朝日外報部の中丸徹デスクは、ハリス氏について「『中身がない』と感じ始めた有権者が増えている」と指摘する。特に、選挙の鍵を握るとされる黒人層からの支持が、前回選挙時と比べて低下している点が懸念材料だという。
黒人層の支持離れの理由
ジョージア州で取材したところ、以前はトランプ氏を支持していなかった黒人男性が、「若い黒人男性は現実を見るようになった。自力で生活するのは本当に難しい」と語り、トランプ氏の経済政策に期待を寄せている現状が明らかになった。
ニューヨーク・タイムズの世論調査によると、全米の黒人の民主党支持率は、前回の90%から78%に減少している。別の黒人男性は、「黒人だからといって民主党を支持するのではなく、両候補の政策を比較検討すべきだ」と、冷静な判断を呼びかけた。
具体的な政策提示の欠如
中丸氏は、ハリス氏がバイデン大統領との違いを明確に打ち出せていない点を指摘する。保守派寄りのメディアであるFOXテレビのインタビューでは、司会者からの政策に関する質問に対して、具体的な回答を避ける場面も見られた。
例えば、司会者から「政策について詳しく知りたいという声がある」と問われた際、ハリス氏は「Kamalaharris.comにアクセスしていただきたい」と自身のホームページを参照するように促すにとどまった。
副大統領という立場がもたらす困難
そして、ハリス氏にとって最大の障壁となり得るのが、“副大統領”という立場だ。歴史的に見て、副大統領から大統領に就任したケースは15例あるものの、現職の副大統領がそのまま大統領になるのは非常に稀である。
前嶋教授は、「現職政権の中で、副大統領は実績を積みづらい。むしろ、マイナスになってしまうことすらある」と指摘する。
今後の選挙戦の行方
ハリス氏には、黒人層の支持を取り戻し、具体的な政策を提示することで”中身不足”というイメージを払拭することが求められる。残りの選挙期間で、これらの課題を克服し、支持を拡大できるかが焦点となるだろう。