ロシアのプーチン大統領(左)とタジキスタンのラフモン大統領=2018年9月、ドゥシャンベ(AFP時事)
旧ソ連圏の関係を巡り、中央アジアのタジキスタン首脳が、ロシアのプーチン大統領に注文を付けた「名演説」が話題となっている。
【図解】中央アジア
ウクライナ侵攻で、プーチン氏がイエスマンに囲まれているのではないかと懸念が浮き彫りになる中、歯に衣(きぬ)を着せぬ直言はロシアでも注目を集めた。独立系メディアは珍しく演説の全文を紹介した。
「小さな民族だが、歴史も文化もある。尊重してほしい」「われわれは物乞いではない」。発言の主はタジクのラフモン大統領。14日にカザフスタンの首都アスタナで開かれた第1回ロシア・中央アジア首脳会議で、優しい語り口ながらも約8分間、プーチン氏に耳を傾けさせた。
ラフモン氏は、プーチン氏と同じ1952年10月生まれの70歳。タジク内戦中の94年から大統領を務め、国家指導者としてはプーチン氏の先輩だ。中央アジアの他の4カ国は近年、大統領が交代したばかりで、ソ連共産党活動を経験している「たたき上げ」の大物はラフモン氏だけという事情もある。
タジクは旧ソ連を構成した15カ国の中で最貧国のままだ。演説では、ソ連時代に中央アジアが経済発展から取り残されたことを挙げ「そのような政策を取ってほしくないというのがわれわれの願いだ」と訴えた。ウクライナ領の占領地を一方的に「併合」するなど、他国軽視が目立つロシアに、あくまで対等な関係を求めたものとみられる。
くしくも今月15日、ロシアのウクライナ国境近くの軍演習場で乱射が発生し、タジク人が容疑者と伝えられた。旧ソ連圏の民族共存はプーチン政権の課題だ。
5月9日の対ドイツ戦勝記念行事は近年、ウクライナ危機や新型コロナウイルス禍で、来賓は少ないが、ラフモン氏は2021年に参加してロシアの顔を立てた。この年参加した外国首脳はラフモン氏ただ一人で、今年はゼロ。今のところこの行事に参加した「最後の外国賓客」だ。「小さな民族」とはいえ、プーチン氏も一目置くリーダーとして存在感を示している。