ロシア当局者ら、ヘルソン市から退去開始 「ウクライナ軍の攻撃」避けるためと


ロシア当局者ら、ヘルソン市から退去開始 「ウクライナ軍の攻撃」避けるためと

ロシア当局者ら、ヘルソン市から退去開始 「ウクライナ軍の攻撃」避けるためと

ウラジーミル・サルド州知事は先に、ウクライナ軍がヘルソン市を爆撃する可能性があると述べていた。同知事は今回、ロシアが任命したすべての部局と省庁の人員がドニエプル川(ウクライナ語ではドニプロ川)西岸から東岸にわたると説明。また、約5万~6万人の住民も「組織だった段階的な移動」を行うと述べた。

これに対しウクライナは、ロシアの動きを無視するよう住民に呼びかけている。

ウクライナ側のヘルソン州トップは、ロシア側が住民を人質に取り、人間の盾として使おうとしていると指摘している。占領国による占領地からの市民の移送や強制退去は戦争犯罪とみなされる。

ヘルソンでは18日夜から、住民の携帯電話に、ウクライナ軍による爆撃を避けるために直ちに避難するよう促すメッセージが送信された。ドニプロ川を渡る交通手段が19日午前7時から利用可能になると伝えている。

匿名でBBCの取材に応じた住民は、「悪のウクライナ人がヘルソン市を爆撃するから避難しろと書かれていた」と話した。

「人々はプロパガンダのせいでパニックに陥っている」

ロシアのテレビ局は19日、大勢がドニプロ川西岸に集まる様子を放映。ボートに乗るための列が映されたものの、全体の人数などは明らかではない。

一方、ウクライナ当局は、多数の人が実際に避難しているかどうかについて疑問を抱いており、群衆が川岸に集まっている画像は大部分が見せかけだと示唆した。

ロシアに追放されたヘルソン州トップの側近のセルヒイ・クラン氏は、見せかけの「退去劇」で、ロシア軍のドニプロ川西岸からの完全撤退という、より大きな動きを覆い隠そうとしている可能性があると述べた。

クラン氏は、「部隊の撤退を私は予見している」と述べ、撤退後にロシア軍が街の破壊を試みることも予想されると付け加えた。

同氏によると、ロシアはヘルソン州の新たな州都をクリミア半島に近いヘニチェスクに置こうとしているという。すでに、ヘルソン占領に携わっている銀行や事務所などは避難したという。

ヘルソンの住民の1人はBBCワールド・サービスの取材に対し、ウクライナ軍がヘルソンを解放するまではどこにも行かないと話した。

「人々はパニックになってなどいない。誰も避難したいと思っていない」

ウクライナ当局は、ヘルソンからの避難がロシアへの強制移送の始まりになるのではないかと警告している。

ロシア占領下のメリトポリ市のイヴァン・フェドロフ市長は、ロシアがヘルソンに「兵士と裏切り者」を住まわせる代償として、市民は強制退去させられ、家を奪われていると警告した。ウクライナは9月、250万人がウクライナからロシアに強制移送されたと発表している。

国連も9月初め、他のロシア占領地域からウクライナの子どもたちが強制移動させられたという信憑性(しんぴょうせい)のある告発が、すでにあったと発表した。ロシアのヴァシリー・ネベンジア国連大使は、この疑惑を「根拠がない」と述べている。

ヘルソン市は、2月に侵攻を開始したロシア軍が最初に制圧した大都市であり、占拠を果たした唯一の州都。

ウクライナ軍はここ数週間、同市付近の国土を着実に奪還している。ドニプロ川に沿って南に30キロメートル近く進んでおり、ロシア軍を追い込む勢いだ。

ロシア軍でウクライナでの戦争の作戦統括者に任命されたセルゲイ・スロヴィキン将軍は18日、ヘルソン市が「困難」な状況にあると述べ、住民の避難を示唆していた。また、「全体として、特別軍事作戦地帯の状況は緊迫していると言える」と話した。

これを受け、サルド氏をはじめとするロシアに任命された現地の当局者らが次々と、ウクライナ軍による攻撃があると主張した。

これに対し、ウクライナのアンドリー・イェルマク大統領首席補佐官は、同国軍が都市を砲撃したという偽ニュースでロシア政府は住民を脅そうとしていると述べた。「AFU(ウクライナ軍)が都市を砲撃しないことを考慮すれば、これはかなり原始的な戦術だ」と、イェルマク氏はテレグラムに書いた。

ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領顧問も、ロシアがヘルソン併合の式典を行ってから1カ月もたっていないと指摘。「架空の空想の世界に生きていると、現実は痛い目にあう」と述べた。

ロシアによって追放されたヘルソンの副市長は10月初め、同市の人口は占領前の32万人から10万人まで減っていると述べている。

(英語記事 Russians start leaving Ukraine’s Kherson city )

(c) BBC News



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