ロシアの大規模砲撃、ウクライナの電力系を標的=ゼレンスキー大統領
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は22日夜、ロシア軍が新たにウクライナ各地の電力系を標的に「大規模な攻撃」を開始したと述べた。ただし、ほとんどのロシアのミサイルやドローンは迎撃されており、ウクライナ軍の進軍を妨げるものではないとも強調した。
ゼレンスキー氏は毎晩恒例のビデオ演説で、ロシア軍はウクライナの西部、中部、南部、東部を「非常に広範囲に」攻撃していると述べた。
ゼレンスキー氏は、ロシアの砲撃のほとんどを迎撃しているとした上で、「もちろん現時点ではロシアのミサイルや攻撃ドローンを100%撃墜する技術的能力はない。いずれ、パートナー諸国の協力を得て、それができるようになると確信している」と述べた。
ゼレンスキー氏によると、22日にロシアはロケット砲36発を撃ち込んだが、ウクライナ軍がそのほとんどを迎撃したという。
ウクライナ政府によると、国内で150万世帯近くで停電しているという。17日に始まったロシアによる一連の砲撃で、ウクライナの発電所などエネルギー生成施設の3割近くが破壊された。
直近の攻撃では、首都キーウから南東のチェルカシ州や、西部フメルニツキ市などが標的にされている。南西部オデーサや北西部リウネ、同ルツクでも、砲撃と電力系の破壊が報告されている。
大手電力会社ウクレエネルゴによると、今月初めの激しい攻撃より、直近の攻撃による被害が大きいかもしれないという。
西部リヴィウのセルヒイ・キラル副市長は22日、BBCに対して、ロシア軍は冬が訪れる前に生活に不可欠なインフラを破壊し、戦争の現場を前線だけでなく国民の生活の場に持ち込もうとしていると話した。
「ウクライナ軍が前線で優勢になればなるほど、銃後の市民の生活は悪化する。ロシアは全力を尽くして、民間人を標的にし、重要インフラを標的にしようとするからだ」と、副市長はBBCラジオの「ニューズアワー」番組で話した。
ゼレンスキー大統領は20日には、ロシア軍の支配下にある南部ヘルソン州で、ロシア軍がカホフカ水力発電所の主要ダムに地雷を仕掛けたしたと非難した。ゼレンスキー氏によると、同発電所が深刻な被害を受けた場合、80の市や町が冠水し、ザポリッジャ原発の冷却水が失われる恐れがあるという。
ダムは、ウクライナを南北に流れるドニプロ川(ロシア語でドニエプル川)にかかっている。
これについてロシア側は、ダム爆破計画を否定し、ダムにミサイルを撃ち込んでいるのはウクライナ側だと反論した。
ロシアが部分的に占領するヘルソン州でドニプロ川を渡れる場所は、各地の橋の破壊で減り続けている。ロシア軍は渡河にダムを使う可能性もある。
ヘルソン州でウクライナ軍が進軍を続ける中、このところ多くの市民が州都ヘルソンから避難している。22日にはロシアの占領当局があらためて住民に「ただちに」避難するよう命令した。
国際法では、占領軍が現地住民を強制的に移動させる行為は戦争犯罪とみなされる。国連は9月、ロシア支配地域からウクライナの子供たちが強制的に移動させられているという信用できる情報が相次いでいると指摘していた。
ロシアのワシリ・ネベンジャ国連大使は、そのような指摘には何の根拠もないと反論している。
他方、ウクライナ軍によるとロシア軍は22日、へルソン州のチャリウネ村とチカロヴェ村から撤退したという。第三者による検証はされていない。
国境を越えたロシアのベルゴロド州では行政担当者が、ウクライナの砲撃で2人が死亡したとしている。
(英語記事 Ukraine war: Massive Russian strikes target energy grid – Zelensky)
(c) BBC News