欧米はウクライナへの防空支援「強化すべき」、シリア内戦の再来警告=英シンクタンク


欧米はウクライナへの防空支援「強化すべき」、シリア内戦の再来警告=英シンクタンク

欧米はウクライナへの防空支援「強化すべき」、シリア内戦の再来警告=英シンクタンク

ロシアとウクライナはこれまでのところ、どちらもウクライナの制空権を掌握できていない。どちらのパイロットも、相手側の防空システムに撃墜されたくないからだ。

ロシア空軍は規模と熟練度で、ウクライナ空軍をはるかに上回る。それでもロシアはその優れた空軍力を展開するのではなく、代わりに長距離弾道ミサイルや巡航ミサイルを駆使している。最近ではそれに加えて、大量生産された安価なイラン製ドローン「シャヘド136」も使っている。

ウクライナはこうしたミサイルの多くを撃ち落としてきた。しかし、迎撃をすり抜けたミサイルは、冬が始まろうとしているウクライナの電気・水道インフラに深刻なダメージを与えている。

こうした中、英王立防衛安全保障研究所(RUSI)が7日に公表した最新の報告書は、ロシア軍による大規模な空爆を食い止めるために必要な武器を、ウクライナ軍が使い果たす危険性があると警告している。

英ロンドンを拠点とするシンクタンクのRUSIは同報告書で、西側諸国がウクライナへの防空支援を維持・強化しない限り、ロシアはシリアで駆使したのと同じ爆撃技術をウクライナでも使い、壊滅的な影響を与える可能性があると警告している。

ロシアは強硬派のセルゲイ・スロヴィキン将軍をウクライナ侵攻作戦の総司令官に据えた。スロヴィキン氏はロシア航空宇宙軍の司令官として、アレッポなどシリアの複数都市に対する集中爆撃を指揮した人物だ。

■「ロシア空軍を寄せ付けない」戦闘機が必要

RUSIの兵器専門家たちはウクライナに入り、数カ月かけてウクライナ軍の情報将校や防空担当者にインタビューを行い、墜落したロシア軍のミサイルシステムの残骸を調査した。

戦地では、ドイツが提供したゲパルト自走式対空砲など大型のシステムとともに、マンパッズと呼ばれる小型の持ち運び可能なロケットランチャーが防空を担ってきた。

報告書の筆頭著者ジャスティン・ブロンク氏は、ウクライナに本当に足りないのはロシア空軍を寄せ付けないようにする近代的な多用途戦闘機だと、BBCに語った。ブロンク氏は、その役割を果たせる戦闘機の1つになり得るとして、何千機も製造されている北大西洋条約機構(NATO)のF16戦闘機を挙げた。

ただ、この戦闘機は平らで長い滑走路を必要とするため、ロシアの標的になりやすいという欠点がある。もう1つの候補として、ブロンク氏はスウェーデン製の戦闘機グリペンを挙げた。グリペンは小型で、森林地帯での活動も可能という。

■防衛力強化が緊急の課題

しかし、西側諸国はウクライナに強力な兵器を提供することでロシアのウラジーミル・プーチン大統領を刺激し、さらに思い切った行動を取らせることになるのではないかと警戒している。

これまでのところ、NATOが提供した兵器はロシアの砲兵を押し戻したり、侵入してきた戦車隊を待ち伏せしたり、攻撃ドローンを撃ち落とすなど、防衛目的だと明確に定義されたものがほとんどだった。最先端の戦闘機を供与すればウクライナの戦闘力は一気に増強され、ロシア政府と西側諸国の対立がエスカレートする恐れがある。

それでも、RUSIは報告書で、西側諸国はウクライナの防空問題をこのまま座視してはいけないと呼びかけた。

報告書はこう締めくくっている。ロシアがウクライナの地対空ミサイルシステムを破壊できなかったからこそ、ロシア空軍はシリアで都市の大部分を荒廃させたあの戦略を、ウクライナで繰り返せずにいるのだと。ウクライナの防衛力を補うことは緊急の課題なのだと。

(英語記事 West urged to step up Ukraine air defence support)

(c) BBC News



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