ロシアのプーチン大統領=2022年12月9日、ロイター
ロシアのプーチン大統領は9日、西側諸国に対する「信頼はゼロに近い」と述べた。2014年から続くウクライナ東部紛争の停戦合意(ミンスク合意)を巡り、仲介したドイツのメルケル前首相が、ウクライナの軍事力を整備するための時間稼ぎを狙っていたと発言したことに反発した。
【車、車、車…】ロシア国境、動員令で“脱出渋滞”
プーチン氏は訪問先のキルギスの首都ビシケクで、記者の質問に回答した。
メルケル氏は7日公開された独紙とのインタビューで「14年のミンスク合意はウクライナに時間を与える試みだった」と発言。「14~15年にかけてのウクライナ(の軍事力)は今ほどではなかった」とも述べ、ウクライナ軍の増強に一定の時間が必要だったとの認識を示していた。
フランスと共に停戦合意の仲介役を担ったメルケル氏の発言について、プーチン氏は「このような発言の後では、どのように、何を交渉して、誰かと交渉できるのか、保証はあるのかという疑問が湧いてくる」と批判をにじませた。
14年に始まったウクライナ東部紛争では、ロシアが支援した武装勢力とウクライナ軍が衝突し、後にロシアが非正規部隊を送り込んで加勢したとみられている。追い込まれたウクライナが14年9月と15年2月の2度にわたり、停戦合意に応じる形となった。
合意では、紛争地域からの重火器や外国部隊の撤収などで折り合った一方、ウクライナは選挙を実施した後で親露派の支配地域に「特別な地位」を与える項目などで譲歩した。ウクライナ側が履行できなかった項目が多かったことから、ロシアや親露派が批判材料として、ウクライナを揺さぶり続けた。
一方、ロシアや支援する親露派もミンスク合意の履行に取り組まなかったと指摘されている。今年2月には、親露派勢力が自称する「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を国家承認する決定を下し、ミンスク合意を実質的に破棄した。【大前仁】