
TBS NEWS DIG Powered by JNN
国境から遠く離れたロシア領内の空軍基地が爆破され、ウクライナの反撃がついにロシア国内に向けられたのか注目されている。だがアメリカを中心に西側は長距離攻撃能力をウクライナに提供することには依然として慎重だ。一方で、アメリカ・オースティン国防長官は「ウクライナが独自に長距離攻撃能力を開発するのを阻止するかと問われれば答えはノーだ」としている。
これまでウクライナの兵器製造能力について多くは報じられてこなかったが、実はウクライナには西側に引けを取らない軍事企業グループが存在する・・・。
【写真を見る】“プーチンの戦争”の隠された狙い?ウクライナは“兵器先進国”だった【報道1930】
■「1分の延長の代償は誰かの命なのです」
10月17日にウクルオボロンプロムという企業がSNS上で次のように発信した。
「航続距離1000km、弾頭重量75㎏のドローンの開発を完了しつつある」
ウクルオボロンプロムとは、ウクライナの国有軍事企業グループ。137社で構成され従業員は約6万7000人、売上高は国家機密だが約1400億円(2020年)とみられる。契約先はアメリカの航空会社、カナダの電子機器企業など世界各国に及び、半導体はアメリカや韓国から、精密機械は日本、ドイツから輸入している。
ウクライナの軍事産業に精通する元日銀マン田中克氏は、IMFを経て2016年からウクライナ財務大臣のアドバイザーとして侵攻直前の今年1月までキーウに住んでいた。
ウクライナ財務大臣アドバイザー 田中克氏
「もともとあった軍事企業グループを国家戦略的に2010年に統合した。それまで国有企業や民間企業がバラバラにやっていて赤字だった。それを集約して国家目標を立てて企業体として黒字転換を目指した。そこで輸出に力を入れた。輸出先としては中国これが一番大きい。それからインド、タイにも戦車入れてますし、ミャンマーも艦船の輸入をしている。そしてクリミアが2014年併合された直後ころから黒字転換したんです。武器製造能力は世界一流と考えていいです。私も見学してますけど、航空機、戦艦、ジェットエンジン、ロケットエンジン全部作ってます。(中略)工場の中を見たんですけど精密機械は殆ど、ドイツと日本のものでした」
実はロシアが侵攻してから西側の兵器が届くまでの2か月、ウクライナが持ちこたえられたのは、ウクルオボロンプロムが24時間体制で稼働していたおかげだという。
もちろん現在も、ウクライナで使われている兵器は西側から供与されたモノばかりではない。
番組では、ウクルオポロンプロムの担当者に直接話を聞いた。
ウクルオボロンプロム ナタリヤ・サド報道官
「ウクライナはソ連の兵器を使っていたのでNATOで入手できない砲弾も必要です。NATO規格の砲弾はソ連の兵器には使えません。ソ連規格の152ミリ榴弾の生産量は敵の情報機関も活動しているので公表はできないですがロットで作っています。ロットというのは最低でもひと月1000発単位で。これは事実です。部品を外国から輸入していましたから2月24日以前と同じスピードで作ることはできません。最短でモノが届くようにパートナー国やそこの企業と交渉しています。1分の延長の代償は誰かの命なのです」
さらにウクルオボロンプロムの役割として武器を作ること以上に大切ことがある。それは西側には協力できないことだ。
ウクルオボロンプロム ナタリヤ・サド報道官
「ほとんどの兵器は現場で修理しています。専門家のチームが前線や後方に出向いて素早く修理します。ウクライナ軍の兵器も少し前までロシア側が使っていた兵器なので、戦利品としてロシア軍から奪った兵器も修理して使えます」
この兵器を現場で修理できることは実戦において大きな戦力だという。
元陸上自衛隊東部方面総監 渡部悦和氏
「第一線に来て修理してくれるというのは素晴らしいこと。これがないと第一線の部隊は使い物にならない。今りゅう弾砲は非常に故障が多いんです。西側が供与したりゅう弾砲の3分の1は修理中が現実。修理が来てくれるっていうのは助かる。ロシア軍にはそんなの無いですから」