安全保障のバックボーンが壊れたドイツ、作戦準備が整ったPzH2000は36輌だけ

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ドイツ人は先進的な歩兵戦闘車「Puma」が引き起こした問題にショックを受けているが、今度は「105輌も保有するPzH2000も作戦準備の基準を満たしているのは36輌しかない」と報じられて注目を集めている。

安全保障のバックボーンが壊れた状態でウクライナ侵攻を迎えたドイツの苦悩

ドイツ連邦軍の作戦準備に関する極秘報告書を入手したSüddeutsche Zeitung(SZ)紙は今月13日、目に余るような軍の脆弱性を明かしていると指摘して「リトアニアに派遣した約3,000人規模の戦闘旅団は砲兵装備の不足しているため自前の火力支援(砲兵部隊)は欠けており、今のところ不足する大砲をカバーする装備はどこにも見当たらない」と報じていたが、今度は「105輌も保有するPzH2000も作戦準備の基準を満たしているのは36輌しかない」と報じられて注目を集めている。

安全保障のバックボーンが壊れたドイツ、作戦準備が整ったPzH2000は36輌だけ

出典:7th Army Training Command from Grafenwoehr, Germany / CC BY 2.0

極秘報告書を入手したBild紙は「今月2日時点でドイツ軍が保有するPzH2000は105輌だが利用可能な数は73輌しかなく、作戦準備の基準を満たしているのは50%程度なので36輌程度しか運用条件を満たしていない。さらに2日時点で18輌のPzH2000がメーカーの工場で整備を受けており、これが36輌の中にカウントされてるのかは不明だ」と指摘。

恐らくドイツ軍が書類上で保有するPzH2000の数は105輌、実際に陸軍の砲兵部隊に配備されているのは73輌、装備の状態、人員の充足率、訓練レベルなどを加味したPzH2000の作戦準備率は50%程度=36輌程度しか実戦任務に耐えられないという意味で「保有するPzH2000の内36輌しか動かない」という訳では無いが、ドイツ陸軍はPzH2000のウクライナ提供に猛反対していた当時「実際に動かせるPzH2000の数は約40輌に過ぎず、数輌でもウクライナに提供してしまえば任務に支障を来す」と警告していた。

安全保障のバックボーンが壊れたドイツ、作戦準備が整ったPzH2000は36輌だけ

出典:Bundeswehr/Maximilian Schulz

政府は世論の圧力に押されPzH2000の提供を実行したため、リトアニアに派遣した戦闘旅団から砲兵部隊が失われたのも、作戦準備の基準を満たしたPzH2000の数が40輌を割り込んだのも陸軍の予想通りで、装備の稼働率を支える産業界のインフラを急に拡張するのが如何に難しいか、装備が動いても人員や訓練が追いつかないと使い物にならないという現実をよく表している。

利益を確保しなければならない産業界は年度単位でしか執行されない予算に基づき生産計画を立案、この需要に合わせて各サプライヤーも生産に必要な材料や部品を発注し人員の雇用計画を立てるので「直ぐにスペアパーツの供給量を倍にしてくれ」と要求されても生産規模が小さい防衛装備品のエコシステムに余剰の生産能力はなく、信じられないようなコストを負担して供給拡張かかるリードタイムを圧縮できたとしても軍の人員や訓練が追いつかないと意味が無い。

安全保障のバックボーンが壊れたドイツ、作戦準備が整ったPzH2000は36輌だけ

出典:Krauss-Maffei Wegmann GmbH & Co. KG

因みにRadio Libertyは今年7月、バーボック独外相に「ドイツはEU加盟国の中で最も経済力が大きく、世界有数の武器輸出国なのに何故ウクライナへの軍事支援はポーランドやノルウェーより少ないのか?政治的な意図で支援を絞っているのではないか?」と質問、これについて外相は「政治的な意図で支援を渋っているのではなく、私たちは二度と欧州で戦争は発生しないと信じていたため国防予算を削減し過ぎてしまい、支援に回せる余剰装備の在庫を持っていない」と反論。

外相は「戦車を再び戦争で使用するとは想像していなかったため、軍の在庫にある装備の多くが50年前のもので本来の在庫の姿からかけ離れている。つまり我々が保有する戦車は平和な欧州で運用することだけを想定していため想像を絶するほど最悪な状況だ」と述べており、冷戦終結後の安全保障政策が有事を想定したものではなかった=表面的なものに過ぎなかったことを認めている。

安全保障のバックボーンが壊れたドイツ、作戦準備が整ったPzH2000は36輌だけ

出典:Dirk Vorderstraße/CC BY 2.0

つまりメルケル政権は「欧州で戦争は二度と起こらない」という前提で安全保障政策を考えたため、ドイツ軍を完全に動かすだけのインフラを維持するのは無駄=NATO即応部隊や国際的なミッションに派遣される部隊だけ作戦準備を満たす規模までインフラを縮小、この考え方は平和の配当を受け取っていた時代にマッチしていたものの前提が崩れ始めた2014年以降も考えを改めなかったため、安全保障のバックボーンが壊れた状態でウクライナ侵攻を迎えたわけだ。

この問題はドイツだけの特異な事象ではなく、NATOの関係者は「ウクライナ侵攻が発生した時点で、大半の加盟国がもつ武器・弾薬備蓄は所定の半分以下だった」と明かしており、部隊の作戦準備率や装備の状態については非公開なので何とも言えないがドイツ並な国(特にロシアと国境を接していない国)が隠れていたとしても不思議ではない。

NATO、大半の加盟国がウクライナ支援で武器・弾薬の備蓄を使い果たした
ドイツ外相、欧州で戦争は発生しないと信じて国防予算を削減し過ぎた
ドイツが陸軍保有のPzH2000提供を検討、但し半分以上が動かない

 

※アイキャッチ画像の出典:Public Domain

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