
『私はないものを数えない。』より(C)Sumiyo IDA
SNS総フォロワー数70万人超、2022年秋にミラノコレクション、23年春にパリコレクションのランウェイを歩き、歌手・MISIAのアリーナツアーでバックダンサーも務めた車椅子モデル・葦原海(あしはら・みゅう)。両足をなくしても、「そんなの関係ない!」とやりたいことにまっすぐに、毎日を楽しみ尽くす彼女の姿が反響を呼んでいる。同年5月に刊行された初の書籍『私はないものを数えない。』では、「車椅子女子」という“ハッシュタグ”を超えたその圧倒的行動力の背景にある、究極にポジティブなものの見方・考え方を初めて語りつくした。今回は書籍の中から一部抜粋して届ける。
【写真】絵のような1枚!パリのおしゃれなカフェで食事を楽しむ葦原海
■車椅子ユーザーになって“できなくなったこと”
「車椅子ユーザーってどんな感じ?」とたくさん質問をいただくので、あるとき、あえて「できないこと」を挙げてみた。
・高いところのものを取る(座った状態だから、あれこれ手が届かない)
・絶叫系のアトラクションに乗る(ルール・制限あり)
・ジーンズやミニスカ、ショーパンをはく(着ないので妹にあげた)
・袖がふわっとした服を着る(車椅子の車輪に巻き込まれる)
・白や明るい色を大事なときに着れない(これも車輪で汚れる)
・衣替え(クローゼットの高いところ、低いところに手が届きにくい)
・傘がさせない(両手で車輪を回すから。雨の日は基本カッパ!)
・食べ歩き(やっぱり両手がふさがる問題)
・時間ギリギリの行動(移動は時間がかかる)
テーマパークが大好きな私としては、いろんな制限で乗れないアトラクションがあるのはちょっとつらい。
ディズニーだと絶叫系の3大マウンテンは、「緊急停止したときに自力で梯子(はしご)を降りられること」という条件があるから無理。カヌーはバランスが難しく、スター・ツアーズもダメだけど、あくまで私の場合であって、車椅子ユーザーでも床で踏ん張る力がある人なら乗れると思う。
とはいえ、なんやかんやでディズニーで乗れないアトラクションは6個だけ。
40くらいあるうちの6つがNG──要するに、ほとんどOKってこと!
ディズニーは相変わらず大好きだし、定期的に行っている。
■車椅子ユーザーになってラッキーなこと
できないことがあっても、できることはあるし、車椅子ユーザーになってラッキーなこともある。
・障害者割引でディズニーや交通機関、映画が安くなる
・大勢の飲み会や交流会で覚えてもらえる(車椅子・両足がない・派手)
・靴下、タイツ、靴が不要(服だけでも大量なのでよかった!)
訓練のおかげで、私は一人でトイレも行けるしお風呂も入れる。一人で外出できるし、なんなら旅行もしょっちゅうしている。
着替えはベッドの上で、寝転がってボトムスをはく。下半身着痩せコーデができないぶん、ポイントはベルト。いろいろ集めて、たくさん持っている。
高いところのものは、取ってもらえばOK。実家の頃は家族に頼んだし、旅先だとあらかじめホテルの人に、「シャワーヘッドを外して床に置いておいてください」などと頼む。
一人暮らしだから料理もする。体重をかけられないから、皮が硬いかぼちゃは切れないけど、スーパーでカットかぼちゃを買ってくればいい。
ハンバーグなんかを混ぜるときは、ボウルを膝に置けば大丈夫。
揚げ物は、顔の高さにフライパンがくるのがやや怖いとかはあるけれど、ちょっとずつ便利グッズで改善していくつもり。
今は彼氏がいないけど、もしもできたら、特典もついてくる(笑)。
階段で抱っこ、おんぶをしてもらうことになるから、ツンデレ系男子でも自然にくっつける。無料の筋トレになって、ますますかっこよくなるはず。
もしも転んで落ちても、私は地面から自分で車椅子に乗れるから安心して。
ラクではないけど、つらくはない。
工夫して「できる」を増やすことを楽しんでいる。
土砂降りの大雨の日も傘がさせないから、カッパを脱いだり着たり畳んだりの繰り返しで大変だけど、雨の日が大変って、みんなだってそうでしょ?
面倒だなってことがあるから、楽しいことを感じられるし、さらに幸せを感じやすくなる。