写真=ユーチューブチャンネル「カラキュラ探偵事務所」のキャプチャー(c)MONEYTODAY
【06月08日 KOREA WAVE】事件・事故を取り上げる韓国のユーチューバー「カラキュラ(Caracula)」が、捜査当局が伏せてきた「釜山(プサン)回し蹴り事件」の被告の身元を明らかにし、論議を呼んでいる。ネットユーザーらは、カラキュラの行動に感情的には共感するが、身元公開制度の枠外で個人が情報を広めれば、深刻な社会的影響を及ぼすと危惧している。
◇衝撃の事件
「釜山回し蹴り事件」は昨年5月22日、釜山・西面(ソミョン)のあるオフィステル1階の共同玄関で、30代男性が面識のない女性の後頭部を回し蹴りし、倒れた女性を無差別に蹴りつけたというもの。女性は頭に大けがを負った。男性は3日間の逃亡の末、逮捕された。警察に調べに対し、「にらみつけているようで、気分が悪かった」などと供述していた。女性が性被害に遭った可能性も指摘されている。
男性は殺人未遂罪で起訴され、同10月には1審で懲役12年の判決が言い渡され、現在、控訴審が進められている。検察の求刑は懲役35年。
事件の一部を収めた監視カメラの映像がメディアで公開され、韓国国内に衝撃が走った。
◇法手続きによらず
カラキュラは今月2日、ユーチューブチャンネルに約9分間の映像をアップした。そこには▽被害女性のインタビュー▽男性の名前・顔写真・生年月日・身長・血液型・前科などの情報▽カラキュラが違法であることを知りながらも、なぜ身元を公開したのかの説明――などが盛り込まれている。
カラキュラは「個人のユーチューブチャンネルで身元を公開してよいのか悩んだ」という。法手続きによらずに身元を公開する場合、自身も事実の摘示(誹謗中傷ではなく事実関係を示す行為)による名誉毀損で処罰される恐れがあると認識しているそうだ。そのうえで▽男性に関する情報の公開を被害女性が望んでいる▽男性が社会復帰した後、報復されるのではと女性がおびえている――などの理由も明らかにした。
◇警察・検察は慎重に検討
ネットユーザーの一部には、カラキュラによる身元公開を支持する声が上がる一方、多数は「私的制裁」への懸念を示した。法手続きによらずに公開した行為が、もう一つの犯罪にあたるためだ。
特定強力犯罪の処罰に関する特例法によると、犯行が残虐であり、重大な被害が発生した事件である▽容疑者がその罪を犯したと信じられる十分な証拠がある▽国民の知る権利の保障、容疑者の再犯防止・犯罪予防など公共の利益のために必要である――などの要件を満たさなければ、身元を公開できないと規定している。
一方で、人権保護の観点から、個人情報の公開が乱用されてはならないという規定もある。そのため、警察や検察も関連する規定を慎重に検討し、公開の可否を決定している。
今回は、この制度外で個人情報が広まったため波紋を呼んでいる。
(c)KOREA WAVE/AFPBB News
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