ウクライナ軍によるロシアへの大規模な反転攻勢に対し、露軍は攻撃ヘリの大量投入や通信妨害といった新しい手法で抵抗している。南部では重層的な防衛線を敷き、ウクライナ軍を阻む狙いだ。米欧はウクライナに防空システムの供与などの支援を表明したが、反転攻勢は長期化する可能性も指摘されている。
【表】一目でわかる…ロシアの戦力はウクライナを圧倒している
士気低下も
(写真:読売新聞)
戦況を分析する米政策研究機関「戦争研究所」は15日、東部ドネツク州南西部から南部ザポリージャ州西部に延びる二つの戦線の情勢に関し、「露軍はドクトリンに沿った秩序だった防衛を維持している」との見方を示した。
露軍の防衛で注目されるのが、敵の通信を妨害する「電子戦装置」の積極運用だ。ウクライナの大規模反攻は、工兵なども参加する「諸兵科連合」作戦で、通信が遮断されると部隊間の連携が困難になる。
露軍は通信を妨害しながら、これまで温存してきた対戦車ヘリや自国製の自爆型無人機「ランセット」を使って、ドイツ製戦車レオパルト2や米国のブラッドレー歩兵戦闘車を狙い撃ちした。4月に流出した米政府の機密文書で、ウクライナ軍は前線で使う主要防空システムの弾薬が不足していることが暴露されており、空からの攻撃は弱点を突かれた格好だ。
露軍はウクライナが反攻を仕掛ける地域で、塹壕(ざんごう)を掘り、地雷原を敷くなど防衛線を築いている。南部には精鋭部隊を配置しているとされ、目的地の奪還に100キロ・メートル程度の進軍が必要なウクライナ軍の行く手を阻む形になっている。
米戦略国際問題研究所(CSIS)は、露軍の防衛線に関する分析で、露軍の約1000キロ・メートルに及ぶ防衛線のうち、南部ザポリージャ州が最も重層的で強固だと指摘した。中間地点にあるトクマクには環状に防衛線が張り巡らされているという。
一方、英国防省は露軍の防御に関し、統率が乱れている部隊があると指摘する。露軍はこれまでの戦闘で消耗し、士気が下がっているとの見方もあり、ウクライナ軍が付け入る隙になる可能性がある。