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建て替えたマンションの前で当時を振り返る住民の西川智さん(左)と「都市住宅とまちづくり研究会」の杉山昇理事長
人生最大の買い物として購入したマイホームが、ある日突然「耐震強度不足の欠陥マンション」という烙印(らくいん)を押され、取り壊されることになったら――。2005年に発覚した元1級建築士による耐震データ偽造問題。首都圏の完成済みマンション45件が対象になり、住民は退去や補強を余儀なくされた。元1級建築士の有罪判決確定から15年。刑事事件としてはとうに決着したが、当時の住民たちはこの間、どんな思いで過ごしてきたのだろう。
【耐震強度不足が判明したマンションの写真】
桁違いの広さ、相場より2~3割安い価格
東京都世田谷区。三鷹市との境にある住宅街に、32戸の7階建て分譲マンションが建つ。08年に完成し、築年数15年。薄いベージュで統一された外観に特に目立つところはない。他と違うのは、この敷地には以前、別の新築マンション「グランドステージ(GS)千歳烏山」が建っていて、わずか2年で住めなくなったことだ。
GS千歳烏山の住民だった会社員の西川智さん(52)は「『子どもが大きくなっても住み続けられる広い家が見つかった』と喜んだ」と当時を振り返る。販売する不動産デベロッパー「ヒューザー」の本社に常設された100平方メートル超のモデルルームを訪れ、これまで見てきた物件とは桁違いの広さに驚いた。
これだけの広さながら、価格が相場より2~3割も安いことに疑問も感じたが、「間取りを統一したり、モデルルームの設置を本社だけにしたりすることで経費を抑えている」との営業担当者の答えに納得した。建物の強度も「審査を通っている」と説明された。03年、2棟からなる全31戸のGS千歳烏山が完成した。
住民同士が仮住まいの物件を奪い合い
入居時、西川さんは33歳。住民の多くは同世代で家族構成も近かった。約3800万円のローンを組んだが、「年に1回は海外旅行にも行けるゆとりを持ちたい」と、毎月の支払いは8万円ほどに抑えた。05年春には次男も誕生する。そんな家族4人の穏やかな暮らしは、半年で暗転した。
同年11月、国土交通省は千葉県市川市の1級建築士が、地震に対する建物の強さを計算した文書「構造計算書」を偽造していたと公表する。震度5強の地震でも倒壊する恐れがあるとされた。自宅も対象と分かり「崩れ落ちることもあるのか」と恐ろしくなった。区からは「すぐに退去の手続きを取ってほしい」と告げられ、翌日には千葉の実家に妻と子どもを預けた。仮住まいを求めて周辺の不動産屋を回ったが、住民同士が物件を奪い合う羽目に。妻の直美さん(48)はストレスで母乳が出なくなり、「安物買いの自己責任」との中傷にも悩まされた。「これからどうなるんだろう」とぼうぜんとした。
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