【ソウル=桜井紀雄】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、日本政府による輸出管理強化について、韓国経済の牽引役である半導体産業を狙って「経済成長」を妨げる措置を取ったと強く批判した。経済・外交分野で失政を重ねていると非難されてきた文政権が、今回の苦境は日本に一方的に責任があるといわばスケープゴートとし、世論の収斂(しゅうれん)を図ろうとする意図がうかがえる。
「韓日関係で、歴史問題はポケットの中の錐(きり)のようなものだ。時々われわれを刺して傷つける」
大統領府での15日の会議で、文氏はこう切り出した。
文氏自身は、歴史問題を「知恵を集めて解決していきながら両国関係の未来志向的発展のために協力していくべきだ」と強調してきたのに、日本が「いかなる外交的な協議や努力なし」に歴史問題と経済問題を結び付けた「一方的な措置を取った」と糾弾した。
そもそも今回の問題は、昨年10月にいわゆる徴用工訴訟で日韓が両国関係の基盤としてきた1965年の請求権協定の趣旨を覆し、日本企業に賠償を命じる判決を最高裁が下したにもかかわらず、文氏が「司法に介入できない」の一点張りで半ば状況を放置してきたことに端を発している。韓国紙、朝鮮日報は15日付社説で「政府が『三権分立』を理由に8カ月間、手をこまねいていたことで問題が拡大した」と指摘した。