米空軍大将、NATO加盟国の兵器備蓄量は危険なほど少なくなっている

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在欧米空軍のヘッカー大将は「もはやNATOに冷戦時代のような航空戦力は存在せず、さらに多くの軍事物資がウクライナに提供されたため兵器備蓄は危険なほど少なくなっている」と指摘、さらに同問題を短期的に解決する見通しはないと付け加えた。

産業界が生産設備への投資に踏み切るには『軍関係者の言葉』ではなく『文書化された書類上の正式な要求』が必要

ロンドンで開催されたシンポジウムで在欧米空軍のヘッカー大将は「多くの軍事物資がウクライナに提供されたため兵器の備蓄は危険なほど少なくなっている。全てのNATO加盟国は自国の備蓄状況を正確に把握するべきだ。我々もウクライナに多くの弾薬を提供したが、空軍の戦闘機戦力の規模は砂漠の嵐作戦頃と比較して約半分の規模まで縮小(4,556機→2,176機)しており、英国も同様に戦闘機の数が減少している。つまり冷戦時代のような戦力規模は既に失われてしまっている。この状況を打開するには産業界の協力が必要不可欠だ」と述べた。

米空軍大将、NATO加盟国の兵器備蓄量は危険なほど少なくなっている

出典:Photo by Staff Sgt. Taylor Drzazgowski

米空軍の戦闘機戦力が冷戦終結後に縮小してしまったのは予算削減の影響が大きいものの、2,176機の中身も非常に深刻な問題を抱えている。

ミッチェル航空宇宙研究所は6月末に発表したレポート(Accelerating 5th Generation Airpower)の中で「現在の戦闘機戦力は老朽化(A-10、F-15C/D、F-16C/D、F-15Eの平均機齢は41年、38年、32年、30年)が進んでいる」と指摘、レポートを執筆したジョセフ・グアステラ元空軍中将は「計画された耐用年数を過ぎている。機体が古くなればなるほど必要な整備と部品交換が増加し、その影響でパイロットの飛行時間も減少している。パイロットの年間飛行時間で中国空軍は初めて米空軍を上回った」と指摘。

米空軍大将、NATO加盟国の兵器備蓄量は危険なほど少なくなっている

出典:Mitchell Institute for Aerospace Studies

さらに「冷戦終結後の予算削減で空軍は戦闘機の在庫を4,556機から2,176機に減らし、不足する能力を戦闘効率が高い第5世代戦闘機でカバーしようとしたが、F-22の調達数は750機から187機に削減され、F-35の調達ペースも予定していた水準を大幅に下回る。新造機の調達ペースが急減したため戦闘機戦力に押し寄せるニーズは既存機をより早いペースで消耗させたが、この問題を解決する資金を空軍は持っていない」とも指摘し、グアステラ元中将は「この深刻さを国民に理解させるには大きな戦争で負ける必要があるのかもしれない」と述べていた。

要するに2,176機の大部分が30年以上前の機体で占められ、これを更新するためのF-35A取得もプログラムコストの高騰と遅延で停滞、耐用年数を越えた第4世代戦闘機の能力は相対的にどんどん劣化していくのに運用・維持コストは毎年増加、さらに次期戦闘機プログラムへの資金供給も始まったため空軍予算にはもはや余裕がなく、30年以上前の機体を処分することで何とかF-35Aの取得と次期戦闘機開発に資金を供給しているものの、このアプローチは戦闘機戦力のさらなる減少を意味し、2028年までに米空軍の戦闘機戦力は2,000機を下回る可能性が高い。

米空軍大将、NATO加盟国の兵器備蓄量は危険なほど少なくなっている

出典:U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. Rachel K. Young

ウクライナに提供された軍事物資の埋戻しも簡単な話ではなく、例えばスティンガーの生産ラインは受注減を理由に2020年12月に閉鎖され、2021年7月に海外顧客(恐らく台湾)から発注があったため生産ラインの再稼働が決まったものの、最大の顧客=米軍は18年間もスティンガーの新規発注を行っておらず、RTX(旧レイセオン)は生産ラインを最小規模=月産40発で再稼働させていた。

しかし米陸軍は2022年5月、ウクライナ提供分(2,000発以上)を埋め戻すため1,700発を発注、これだけの量を捌くには生産ラインの稼働規模を拡張する必要があり、これに30ヶ月間かかるためRTXは「発注分のスティンガー納品は2026年からになる」と述べている。

米空軍大将、NATO加盟国の兵器備蓄量は危険なほど少なくなっている

出典:US Army 耐用年数の延長作業を実施しているスティンガーの様子

なぜ生産ラインの再稼働に30ヶ月間もかかるのか疑問に思うかもしれないが、シーカー部分を除くスティンガー本体の製造方法は40年以上前とほぼ同じで、RTXは生産ライン閉鎖に伴い蜘蛛の巣が張っていた製造機器を再び引っ張り出す必要があり、この機器の使用方法を学ぶため退職した70代の元従業員を呼び戻さなければならず、時代遅れの回路カードも再設計が必要なため大規模な生産ラインの再開準備に時間がかかるのだ。

この問題についてRTXのヘイズCEOは「製造プロセスのスピードアップのため3Dプリンターの活用と生産ラインの自動化を採用する方法もあるが、これを行うにはスティンガー自体の再設計が必要になるため、国防総省の認証プロセスを再び受け直さなければならない」と指摘、つまりスティンガー全体を再設計すると新たな認証獲得まで何年もかかるため、手作業で組み立てる40年以上前の製造方法でスティンガーを製造するしかないという意味で、このような問題はウクライナに供給されている装備や弾薬に共通した悩みと言えるだろう。

米空軍大将、NATO加盟国の兵器備蓄量は危険なほど少なくなっている

出典:Lockheed Martin

ヘッカー大将が「危険なほど少なくなっている兵器備蓄を短期的に解決する見通しはない」と述べたのも産業界や制度上の問題に起因しており、ボーイングの関係者も「産業界は需要に対する強いシグナルを受け取っているものの、我々が投資に踏み切るのに必要なのは『軍関係者の言葉』ではなく『文書化された書類上の正式な要求』で、本当に必要だと確信が持てない限り投資を行うことが出来ない」と述べている。

要するに予算を確保するまで軍は正式な発注を約束できないため「スティンガーが沢山必要になる」というメッセージを産業界に向けて発信するのだが、産業界は予算折衝の段階で発注量が増減したり、発注自体が無くなることを知っているため「軍関係者のメッセージだけで需要に対応した生産設備への投資に踏み切れない」と言いたいのだ。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Alexander Cook

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