17日、道路が損壊したクリミア大橋=Сrimea24tv提供、ロイター
ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島と露本土を結ぶ「クリミア大橋」に対する17日の攻撃を巡り、露軍への大規模な反転攻勢を展開するウクライナ軍が露軍の補給妨害と、プーチン政権の威信失墜を狙ったとの見方が出ている。プーチン政権は黒海経由のウクライナ産穀物の輸出を巡る合意からの一時離脱を決め、余波は両国以外にも広がりそうだ。
【動画】激しく破壊されたクリミア大橋
(写真:読売新聞)
17日の攻撃で道路橋は通行止めになった。クリミア大橋を通じた露軍の兵器、兵員、食料の補給は、鉄道が主に担っているものの、露軍に一定の打撃となっているとみられる。
タス通信によると露大統領報道官は17日、プーチン大統領がクリミア大橋にマラト・フスヌリン副首相を派遣しており、同日中にオンライン形式で会合を開いて対応を協議すると明らかにした。
(写真:読売新聞)
日本時間18日午前6時で失効するウクライナ産穀物の輸出を巡る合意に関しては「ロシアの要求が履行されれば速やかに復帰する」と述べ、自国産穀物と肥料の輸出拡大に向けた確約が得られれば復帰するとの立場を改めて説明した。
ロシア外務省は17日、ウクライナ産穀物の輸出合意からの離脱理由を説明する声明で、船舶の安全な通航を確保する「回廊」をウクライナがロシアの民間・軍事施設に対する「テロ攻撃」に利用したと主張した。
ウクライナ軍南部方面部隊の報道官は17日、地元テレビで、クリミア大橋の攻撃は露側が穀物合意からの離脱を正当化するための「自作自演」だったとの見方を示した。
ただ、ウクライナ国営通信は「橋に到達するのは困難だったがようやく成し遂げた」とする関係者の声を交えながら、海軍と情報機関「保安局」(SBU)が関与したと報じている。
ウクライナ軍が6月4日に始めた反攻は、露軍が地雷原や塹壕(ざんごう)などで事前に準備した重層的な防衛線に阻まれ、地上部隊は苦戦が続く。ウクライナ軍は、長射程兵器などで露軍占領地域の後方にある露軍拠点を攻撃して反撃能力を低下させる戦術に切り替えている。
露国防省は9日にもクリミア大橋を狙ったミサイル攻撃を防いだと発表している。ウクライナ軍が、反攻でクリミアと露本土との分断を目指しているのは間違いなさそうだ。