パソコンやスマートフォンから公職選挙の投票ができる「インターネット投票」について、総務省は参院選後、セキュリティー面での課題などを洗い出す実証実験を行う。政府はまず、海外在住の邦人を対象とする在外投票でのネット投票導入を検討。条件が整えば国内の選挙での応用も可能とされ、同省は実験で得られたデータをシステム開発などに生かす。
ネット投票が全面解禁されれば、若者だけでなく、外出が困難な高齢者らの投票行動を後押しする可能性がある。
現行の在外投票は、公館に出向いたり、郵送で投票を行ったりする方法があるが、投票期間が短く、公館の遠方に住む有権者の負担が大きいとの課題があった。約100万人いる18歳以上の在外邦人のうち、在外選挙人名簿に登録しているのは約10万人。名簿登録者上の投票率は20%前後にとどまることから、事実上の投票率は2%程度との見方もある。
こうした経緯から、同省の有識者研究会は昨年8月、「在外投票にネット投票の導入が考えられる」とする報告書を公表。技術面や運用面の課題を整理し、(1)マイナンバーカードを活用した本人確認(2)投票データの暗号化(3)サイバー攻撃や自然災害によるシステムダウンへの対応-などを提言した。
同省は今年度、試験的な投票システム開発費などに約2億5000万円の予算を計上。参院選後に実施する実証実験の中で、投票フローやセキュリティー面での課題を検証する。マイナンバーカードを海外でも利用可能とする法整備なども進んでいる。
有識者研究会は、在外投票でのネット投票の仕組みは国内の選挙にも応用が可能と指摘。同省の担当者は「ネット選挙には課題もあるが、まずは国民の理解が不可欠。着々と実証実験を進める」と話した。