榊原郁恵 彼がくれた最後の優しさ。「コロナ禍でもあるし、大事をとって別の部屋で寝よう」家で過ごした最後の日に寝室を別にしたのが心残りで…

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「時はどんどん前へ進んでいくのに、私の心は過去へと遡っているような、奇妙な感覚の中にいます」(撮影:大河内禎)

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◆時は進んでいくのに 私の心は過去へ遡る

お別れ会の献花の時に流れていたのは、オルゴールの優しい音色が奏でる「カノン」でした。もう一度彼に会いたいという想いから私がリクエストした、夫婦の思い出の曲です。

20年以上も前のことですが、仕事で北海道へ行っていた渡辺が、「お前が好きだと言っていた『カノン』のオルゴールがあったから買ってきたよ」と手渡してくれました。本当のことを言うと、「『カノン』が好きだなんて言ったかしら?」と思ったのです(笑)。きっと何気なく口にしたのでしょう。

そんな些細なつぶやきをキャッチして覚えていてくれたことが嬉しかったのですが、あの時、ちゃんと「ありがとう」と伝えたかしら?と気がかりで……。なんだか私、後悔ばかりしている気がします。

冬を越えて、春が過ぎて、初夏を迎えたというのに、まだまだ気持ちに整理がついていないというのが正直なところです。うまく言えないのですが、時はどんどん前へ進んでいくのに、私の心は過去へと遡っているような、奇妙な感覚の中にいます。

たとえば、明日も仕事だから早く寝なくちゃと思って支度をしていたら、何かの拍子に「本当に彼はもういないのかしら?」なんて思い始め、そうなったらもう大変。あんなこともあった、こんなことも……と次々に断片的な記憶がよみがえってくるのです。

現在と過去を行ったり来たりすることにどんな意味があるのかわかりません。自分がどっぷりと哀しみに浸っているのか、少しずつ癒やされているのかさえも。でも今はどういうわけだか、2人で歩んだ軌跡を辿ってしまうのです。

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