
30日、ニアメーでクーデターへの支持を表明する群衆。ロシア国旗を持った人もいた=AP
【ヨハネスブルク=笹子美奈子】西アフリカ・ニジェールのクーデターで親米欧派のモハメド・バズム大統領が失脚し、軍事政権が成立する可能性が高まっている。周辺国でロシアの民間軍事会社「ワグネル」の影響力が強まっており、米欧がアフリカ関与の拠点としてきたニジェールがロシアに傾斜する懸念がある。
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クーデターは26日、大統領警護隊が首都ニアメーの大統領府を取り囲み、バズム氏を監禁して始まった。アブドゥハーマン・チアニ大統領警護隊長が他の勢力の支持を取り付け、28日に国のトップに就任し、憲法を停止すると宣言した。
バズム氏は監禁された後も危害は加えられていないとみられ、米欧諸国と電話などで接触している。国内では、大規模な戦闘は起きていないとみられる。
中国やロシアとの友好関係を維持する国が多いアフリカで、ニジェールは2021年にバズム氏が大統領に就任後、米軍の訓練受け入れなどで協力した。旧宗主国フランスは、対イスラム過激派作戦のために10年間派遣した部隊を昨年8月に隣国マリから撤退させ、ニジェールに拠点を移した。
マリやブルキナファソでは最近、ワグネルが関与を強めている。クーデター発生後の今月27日には、ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏とみられる人物がニジェール情勢に触れ、「ワグネルは秩序を再構築し、市民を守ることができる」と介入を示唆した音声がSNSに投稿された。
フランス大使館のドア放火
AP通信によると、ニアメーでは30日、フランス大使館前で数千人がデモを行い、ドアが放火された。ロシア国旗を手にして、プーチン露大統領を支持すると訴える人の姿もあった。
欧州連合(EU)とフランスは29日、ニジェールへの援助停止を発表し、クーデターを起こした勢力への圧力を強めた。
◆ニジェール=アフリカ西部の内陸国で、人口は約2600万人。世界最貧国の一つとされる。国民の大多数がイスラム教徒。フランスの旧植民地で、1960年に独立した。クーデターがたびたびあり、最近は2010年に起きた。核燃料となるウランの世界有数の産出国でもある。