バフムートでのウクライナ軍の反撃、冬場の戦いに慣れているため戦いは続く

ウクライナ国防省情報総局のキリロ・ブダノフ少将は、ゼレンスキー大統領のアメリカ訪問に同行し、米国のディフェンスメディアの取材で「ウクライナとロシアの双方が冬場の戦いに慣れているため、反攻作戦の継続に大きな問題はない」と述べました。

砲兵システム、対戦車ミサイル、対戦車地雷が行き渡った戦場において装甲戦力は突破口を開く十分な違いを生み出せない

ブダノフ少将が披露した反攻作戦の主要ポイントは以下の通りです。

出典:Сухопутні війська ЗС Україн

誰もが昨年の戦いを目撃したと思いますが、ウクライナとロシア双方ともに冬場の戦いに慣れているため、「戦い自体」は楽しいものではありません。しかし、戦いの質には過去と現在で重要なニュアンスの違いが存在し、現在の主な戦闘は徒歩中心で行われている点が注目されます。

砲兵システム、対戦車ミサイル、対戦車地雷が行き渡った戦場において、装甲戦力は突破口を開く十分な違いを生み出すことができなくなっています。対戦車地雷がもたらすダメージは比較的小さいですが、車輪が損傷すると動けなくなるため、戦場に大きな違いをもたらしています。

出典:Сили оборони півдня України ウクライナ軍が使用する自爆型ドローン「KH-S7」

さらに特徴的なのは、双方がFPV(First Person View)タイプの自爆型ドローンを大量投入しており、あらゆる装備と交戦している点です。そのため、装甲戦力による交戦は大幅に減少しており、これらの装備は特定の地点に歩兵を運搬するために使用されることがほとんどです。

また、新たに到着するエイブラムスも従来の概念で使用すれば戦場の寿命は極端に短くなるため、非常に特殊で緻密に計画された作戦と慎重に調整された方法で使用しなければなりません。

出典:U.S. Army photo by Spc. Christian Carrillo

実際、マラ・トクマチカ近郊で破壊された装甲車輌は少ないものの、損傷したものは多くありました。どこかの戦場に大隊規模の戦車を配備しても、大砲の射程圏に入れば容易に被弾することが示されました。

昨年の冬にロシア軍が装甲戦力を投入し、ヴーレダーを攻撃しましたが、すべてが破壊された後、直接指揮していたゲラシモフは責任を部下に押し付けて戦場を去りました。一方で、バフムートを占領したワグナーは装甲戦力に依存せず、歩兵と砲兵の火力支援だけで戦いました。

出典:Оркестр Вагнера | Wagner

具体的な犠牲者数は把握していませんが、現在の作戦には高いコストがかかることは明らかです。作戦開始前と後で死傷者が増加するのは論理的な結果です。しかし、ウクライナとロシアの兵力の差は大きいため、兵士同士の消耗戦を続けても望ましい結果は得られません。

そのため、敵の司令部や兵站拠点を攻撃できる長距離攻撃兵器であるATACMS(陸軍戦術ミサイルシステム)が必要です。敵の司令部や兵站拠点はGMLRS弾(HIMARSで使用するロケット弾)の射程外にあり、ロシアの航空戦力も同様です。防空システムで敵の航空戦力と戦うのはコストが高くつくため、基地を攻撃するのが効果的です。

出典:Photo by John Hamilton

ATACMSの提供については正式な発表を待つ必要がありますが、現時点で言えるのは「100発程度の提供では状況は変わらない」ということです。最低でも数百発のATACMSが必要とされています。

以上が反攻作戦に関する要約です。ウクライナ軍のタルナフスキー准将もCNNの取材に対し、「天候の変化が泥濘期をもたらしても歩兵中心の攻勢には大きな影響はない」と述べているため、現在の反攻作戦は装甲戦力ではなく、「歩兵部隊」と「砲兵装備+無人機」が主体であると考えられます。

ウクライナ軍によるバフムートでの反撃は我々が望む結果をもたらしている

ブダノフ少将が披露した東部戦線に関する主要ポイントは以下の通りです。

出典:GoogleMap バフムート周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

バフムートの南で確保したクリシェイフカは小さな集落ですが、他の地域を見下ろせる丘の上にあり、重要な意味を持っています。次のステップはバフムートに繋がる兵站ルートを全て遮断することです。ウクライナ軍の作戦は、実質的にはロシア軍がバフムートを制圧した作戦に似ていますが、唯一の違いは都市への正面攻撃を行わないことです。ウクライナ軍は都市を包囲してから市街地に進攻する予定です。

ウクライナ軍によるバフムートでの反撃は、望む結果をもたらしています。ロシア軍は最後の予備戦力である第25軍(約1.5万人)をバフムート方面に配置せざるを得なくなりましたが、その戦力も準備が整わないままであり、消耗していく運命にあるでしょう。また、他の前線から抽出された戦力もバフムートに集中しているため、ウクライナ南部の占領地域を守る戦力が不足しています。

出典:GoogleMap ザポリージャ周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

これまで攻勢の主体であった空挺部隊も、壊滅した部隊の穴埋めに回されています。ウクライナ軍は全ての前線で戦い続ける必要があります。

クピャンスク方面に対するロシア軍の攻撃は局地的な作戦に過ぎず、キャンペーンや攻勢とは言えません。数ヶ月前に一定の成功を収めましたが、その後はウクライナ軍の防衛ラインで阻止され、進展はありません。

出典:GoogleMap クピャンスク周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

以上が東部戦線に関する要約です。ウクライナ軍はバフムートを正面から攻撃して解放するのではなく、「包囲した上で解放する」と述べています。そのため、バフムート方面の「突出部」を切り取る方向で攻める可能性が高いです。

ネプチューン(対地バージョン)についても、「開発途中で新たな改良が随時加えられているものの、大規模な生産ラインがないため、利用できるネプチューンの数には限りがある」とブダノフ少将は言っています。ウクライナは提供された援助に永遠に感謝し続けるとともに、「ロシアに対する勝利はウクライナと米国の共同勝利になる」と語っています。

出典:Ministry of Defence of Ukraine

ブダノフ少将が披露した反攻作戦や東部戦線の状況は、これまでの情報と一致しているため、特に驚くべきことはありません。しかし、「砲兵システム、対戦車ミサイル、対戦車地雷、自爆型ドローンが行き渡った戦場で装甲戦力がインパクトを残せない」と再確認すると、戦場の変化を感じます。

ウクライナ軍の反攻作戦や東部戦線の状況は、忍耐力と適用力が試される戦いです。

※アイキャッチ画像の出典:СВІТ ブダノフ情報総局長

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