【主張】抑留者遺骨 国の責任を真剣に果たせ

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 これでは祖国を想(おも)いながら凍土に斃(たお)れた抑留犠牲者も浮かばれまい。

 厚生労働省の派遣団が旧ソ連に抑留された日本人の遺骨を取り違えていた。昨年8月には鑑定結果で間違いに気づいていた。それを公表せず、ロシア側にも伝えていなかった。

 厚労省は、事実を知りながら、放置していたと指摘されても仕方あるまい。賃金や労働時間などの動きを示す毎月勤労統計をめぐる統計不正の記憶も新しい。役所を覆う隠蔽(いんぺい)体質に問題があるのではないか。

 遺骨収集は国家の責任であり義務である。一つ一つの遺骨と真摯(しんし)に向き合い、慰霊の気持ちを持って取り組まねばならない。

 厚労省は平成26年8月、先の大戦後に旧ソ連に抑留され、シベリア地域で死亡した日本人のものとして、ロシアから遺骨16柱分を持ち帰りDNA型鑑定を行った。

 この結果、全ての骨が日本人のものではない、もしくは日本人のものではない可能性が高いことが昨年8月に開かれた遺骨の鑑定に関する会議で分かった。この時点でなぜ、事実関係を公表し速やかに遺骨返還に関する協議をロシア側と始めなかったのか。

 菅義偉官房長官は30日の記者会見で、公表しなかった理由について「遺骨の出身地は相手国と協議して公表するものだからだ」と釈明したが、1年間も何をやっていたのか。厚労省に保管された遺骨に対しても礼を欠く。抑留された日本人は、故郷を想い、家族との再会を夢見て亡くなった。

 厚労省によると、埋葬地は地図や近隣の人への聞き取りなどで特定したという。日本側の鑑定人は同行していなかった。遠路はるばる何をしに行ったのか。軽率であり、真剣さが足りない。

 シベリア抑留は、昭和20年8月に日ソ中立条約を破って旧満州などに侵入した旧ソ連軍による歴史的な犯罪行為だ。関東軍将兵ら約60万人が収容所に連行され、約6万人が死亡した。

 沖縄や硫黄島のほか、海外で犠牲になった約112万人分の遺骨が未収集だ。旧ソ連地域からは1万8689人分を収集し、1135人分の身元が判明した。

 死力を尽くし、尊い命を故国に捧(ささ)げた人々との約束だ。遺骨収集事業は、国家の義務として、骨一片に至るまで帰還させる強い決意で取り組まねばならない。

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