日本の排他的経済水域(EEZ)内の「中国海上ブイ」不可解放置 フィリピンと対照的、国連の条約違反もなぜ撤去しない 習政権は既成事実つくる狙いか

日本のEEZ内で中国が勝手に「海上ブイ」を設置した問題が注目されている。この問題について、岸田文雄政権の対応が問われています。政府はブイの存在を確認した後、中国に対して抗議し、即時撤去を求めましたが、日本自身では撤去していません。一方、フィリピンはEEZ内で中国の浮遊障壁を撤去したことで注目されました。このまま放置すれば、習近平政権による領土的な野心が既成事実として認められてしまう恐れがあります。

写真: 中国が設置したロープを切断するフィリピン沿岸警備隊の隊員

元海上保安官である一色正春氏は、フィリピンとの違いについて、「海保や海自は行政組織なので政府の命や法令がなければ動くことができません。一番悔しいのは現場の人間です」と述べています。

問題のブイは、尖閣諸島の魚釣島の北西約80キロに位置し、日中中間線の日本側のEEZの境界線上で確認されました。ブイの直径は約10メートルで、黄色でライトが付いており、「中国海洋観測浮標QF212」と書かれていました。

産経新聞によると、船舶の運航情報を提供するサイト「マリントラフィック」のデータを基にした分析によれば、中国の海洋調査船「向陽紅22」が7月1日に出航し、2日に日本側に1キロほど入った位置で停止し、その後引き返していったとされています。この期間にブイが設置されたと考えられています。

「国連海洋法条約違反」

中国も批准している国連海洋法条約では、構造物の設置や科学調査はEEZを管轄する国にしか認められていません。松野博一官房長官は、今月19日の記者会見で、「EEZでわが国の同意なく構築物を設置することは国連海洋法条約上の関連規定に反する」と批判し、中国に外交ルートを通じて即時撤去を求めたことを明らかにしました。

しかし、なぜ日本政府はブイを放置したままなのか、その理由は明らかにされていません。海上保安庁の担当者は「根本的な法律に違反しているのかは外務省に聞いてほしい。条約上違反があり、仮に撤去しなければならない話でも、どのような手段をとりうるのかは議論になる」と語りました。

外務省の担当者は「国連海洋法条約に違反していると考えているが、撤去や没収などがどこまで認められているかは海洋法条約上に規定がなく、慎重な検討が必要だと考えている」との見解を示しています。

過去にも尖閣周辺のEEZ内でブイが確認されたことはありますが、「撤去したことはない」と海上保安庁の担当者は述べています。

一方、フィリピンは政治的な判断を下し、断固とした対応を取りました。同国沿岸警備隊(PCG)は、中国海警局の船がフィリピン漁船の入域を妨害するために設置した長さ約300メートルの浮遊障壁を撤去したと発表しました。アニョ国家安全保障補佐官は、漁業権の妨害は国際法違反だと非難しています。

なぜ日本もフィリピンのように撤去できないのでしょうか。前述の外務省担当者は、「同一の事象かもしれないが、どのような解釈の下で実施されたのかも分からない。他国がしたことがすべてできるか分からない」と述べています。

自民党の山田宏参院議員は、「フィリピンは撤去したのに、できない理由が分からない。ないがしろにすればサラミ戦術で徐々に既成事実を積み重ねられる。国際法をバックに主権を発動させて撤去しなければマイナスになるだけだ。少なくとも期限を設け、それまでに動かさなければ撤去するなどと主張すべきではないか」と述べています。

具体的な行動をとらないと危ない

このような中国の行動について、拓殖大学海外事情研究所の川上高司教授は、「いよいよ尖閣、台湾有事に向けた一歩を踏み出してきたとの印象を受ける。習主席は最近、『沖縄』や『琉球』に言及していることとも関連し、戦略的に打っているジャブだと思う。日本の対応について米国が助言しているのかを含めて出方を知りたいとの思惑もあるかもしれない」と分析しています。

中国は尖閣諸島の領有を一方的に主張し、周辺の日本の領海やEEZでも中国国内法の適用を正当化しようとしてきました。領有権の拡張を狙った地域で、中国の国内法に基づいて一方的に法を執行し、主権を行使していることを既成事実として国際社会に認めさせる手段です。中国の最高人民法院は、中国の「管轄海域」で違法漁労や領海侵入をした場合に刑事責任を追及できるとする規定を定めています。

ブイの扱いは、岸田政権の評価を左右する重大な問題となる可能性もあります。

川上教授は、「強制撤去に向かうか、日本も同様のブイを設置するか、または尖閣に地震計を置くなど、具体的な行動をとらないと危険だ。国際法には撤去に関する明確な文言はないとされているが、撤去してはいけないとの記述もありません。フィリピンの行動を参考にし、『国際法に抵触せず、フィリピンも実施したように撤去する』と主張するべきです。日本としての意志と行動力が試されているのかもしれません」と指摘しています。

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