リニア新幹線工事による生態系への影響、静岡市長が厳しい批判を展開

Image

静岡市の難波市長は、国交省の有識者会議の報告書案について、「大きな問題がある。これでは県とJR東海の合意形成は厳しい」と厳しい批判を行いました。リニア新幹線工事に伴う南アルプスの生態系への影響についての報告書案がまとめられた有識者会議では、静岡県とJR東海の議論が膠着状態になっており、国土交通省が提案したものです。報告書案の主な議題は「大井川の水への影響」と「生物への影響」です。

国 有識者会議の報告書案に静岡県は難色

南アルプスを貫くリニア中央新幹線静岡工区を巡る国の有識者会議で、静岡県とJR東海の議論が膠着状態だったため、国土交通省の提案によって有識者会議が設置されました。報告書案では、「論点ごとに影響の予測・分析・評価、保全措置、モニタリングのそれぞれの措置を的確に行い、それぞれの結果を各措置にフィードバックし必要な見直しを行う、いわゆる『順応的管理』で対応することにより、トンネル掘削に伴う環境への影響を最小化することが適切」としました。この報告書案に対して、静岡県は「沢の流量変化のシミュレーションが不十分」として難色を示しています。

静岡市長の“わかりやすいリニア授業”
元国交省の技術官僚であり、静岡市長になる前は静岡県副知事としてリニア問題を担当していた難波喬司市長は、報告書に対する考えを述べる前に、「トンネル掘削でどういう現象が起きて何が問題なのか、どうして議論に長い時間がかかるのか市民に理解してほしい」と報告書案の理解に役立つ内容を、有識者会議の資料をもとに記者に説明しました。

まず、難波市長は静岡市の最北端にある南アルプスが「貴重な高山植物の宝庫であり、特別天然記念物ライチョウの生息地の世界の南限で、市内の他の場所とは違う環境影響評価が必要」と強調しました。さらに、「“水資源への影響”より、“生物多様性への影響”の方が対処が困難だ」と指摘しました。難波市長によると、水資源への影響は大井川の総流量に問題がないようにトンネル工事で出る湧水を全量大井川水系に戻せば解決するとされますが、生物多様性への影響は個々の沢などの水分量の変化を把握した上で対処する必要があります。さらに、生物多様性への影響は努力しても回避できないため、低減努力が必要とされています。

また、難波市長はトンネル工事により地下水位が下がるメカニズムを地層の断面図を使って説明しました。静岡県と山梨県の県境付近には断層破砕帯があり、トンネルを掘削するとこの断層破砕帯から湧水がトンネル内に流れ出て南アルプスの地下水位が低下するとされます。この地下水位の低下により、沢の水量に変化が生じることが図で示されました。

リニア新幹線工事による生態系への影響については慎重な対応が求められます。静岡市長の批判を受け、報告書案のさらなる検討が必要でしょう。

日本ニュース24時間からの情報提供です。


Source link: https://news.yahoo.co.jp/articles/87856a6ff7ca2e39435ffecaa17e2757d3e3eb92