文大統領の「南北共闘で日本に対抗」発言は現実離れ?


5日、ソウルの韓国大統領府の会議で発言する文在寅大統領(同府提供・共同)

 【ソウル=名村隆寛】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「北朝鮮との経済協力で平和経済が実現すれば、一気に日本の優位に追い付くことができる」「経済強国として新しい未来を開いていく」とした発言に関し、韓国では現実離れしているとして真意を疑う見方が強い。

 問題の発言は、5日に大統領府で開かれた会議の際、日本政府による輸出管理強化を批判した中で出た。文氏は「日本経済が韓国よりも優位にあるのは経済規模と内需市場だ」「今回のことで平和経済が切実であることを再確認できた」と述べた。

 南北の経済協力構想の概念は、文氏が大統領当選前の野党代表だった2015年に提唱したものだ。昨年8月15日に朝鮮半島の日本統治からの解放記念日「光復節」に行った演説以降、文氏は「平和経済」を何度も口にしている。南北の和解と協力にこだわる文氏の信念といってもいい。

 ただ、北朝鮮の国内総生産(GDP)は約307億400万ドル(17年)、韓国の約1兆5307億5100万ドル(同年)と合わせても約1兆5614億5500万ドルで、当時のレートで約174兆8800億円。南北を合わせても日本の約547兆4千億円(同年)に遠く及ばない。

 文氏の発言は韓国で「絵に描いた餅」のように受け止められており、市場も好反応を示していない。韓国紙、朝鮮日報は6日付の社説で、北朝鮮を「技術も資源も市場もない世界最悪の貧困国家」とし、「低賃金労働力の利用以外に何ができるのか。そんな国と経済協力して世界最高の技術大国(日本)に一気に追い付くとはどんな魔法か」と文氏を批判した。

 低迷から抜け出せない経済に加え、日本の輸出管理厳格化に見舞われている韓国。北朝鮮は文氏の発言を無視するように6日、また短距離ミサイルとみられる飛翔(ひしょう)体を2発、発射した。韓国では「北朝鮮の相次ぐミサイル挑発の中、突然な『平和経済』メッセージには説得力がない」(中央日報)といった、冷ややかな見方が主流だ。

 韓国では、朝鮮日報が「大統領が国民を心配させるのではなく、国民が大統領の言動を見て不安になる国はどこに行くのか。そんな国が危機を切り抜けられるのか」と指摘するなど、経済の先行き以前に、現実とかけ離れたような発言をする大統領の考えに対する不安感が強い。



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