近年、特殊詐欺の手口はますます巧妙化し、特に高齢者を中心に深刻な被害が拡大しています。以前は見破る手がかりがあった詐欺電話も、技術の進歩により本物の警察署の電話番号を完全に偽装するなど、その手口は非常に見分けにくくなっています。警視庁新宿警察署の代表番号と全く同じ電話番号からの不審な電話が相次ぐなど、私たちの日々の生活に潜む危険性が高まっています。
鳥海翔氏(YouTubeチャンネル「鳥海翔の騙されない金融学」で投資詐欺などに詳しい)は、このような偽装電話の手口について、「電話に出ると、警察官を装った相手が『あなたに犯罪の容疑がかかっている』『資金洗浄事件に関与している疑いがある』などと語り、不安を煽るのが常套手段です」と警鐘を鳴らします。これまでは、詐欺電話の番号には「+」や国番号が表示されることが多く、偽物と判断する手がかりになっていました。しかし、最近ではこうした特徴が消え、着信画面だけでは詐欺と見抜くことが極めて困難になっているのが現状です。
特殊詐欺の危険性を示すイメージ画像。電話やオンライン詐欺への注意喚起を促す視覚的シンボル。
特殊詐欺の被害状況と狙われやすい対象
警察庁が発表した「令和6年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値版)」によると、特殊詐欺の認知件数に加え、被害額も急増の一途を辿っています。特に被害に遭いやすいのは、中高年の女性です。
鳥海氏は、その背景としていくつかの要因を指摘します。一般的に高齢女性は投資経験が少なく、金融知識に不安を感じている人が多いため、詐欺師にとっては狙いやすい対象となります。また、家族に相談せず一人で判断を下してしまうケースが多く、さらに有名人の名前や「安心・安全」といった言葉に信頼を寄せやすい傾向も見られます。60代以上の方々は、年金や退職金などまとまった資産を持っていることが多く、「老後の資産を増やしたい」という心理が詐欺師につけ込まれる原因となることも少なくありません。特に一人暮らしの高齢女性は、家族のチェックが入りにくく、詐欺師は時間をかけて信頼関係を築き上げてから、最終的に大金を騙し取る手口を用います。
スマートフォンやPCを入り口とした投資詐欺の急増
電話による特殊詐欺は依然として多いものの、近年ではスマートフォンやパソコンを入り口とした投資詐欺が急増しており、新たな脅威となっています。これには、手元のスマホに直接届くSNSからの勧誘や、有名人が登場する偽のウェブサイトを使った誘い込みなどが含まれ、その認知はまだ十分に進んでいないのが現状です。
巧妙な偽サイト詐欺の手口と見分け方
騙しの手口は、電話のほかに、偽のウェブサイト(HP)、SNS、メールといった形態が主流です。まず、著名な投資家や金融専門家、投資に強い芸能人の名前を騙った偽のHPが制作されます。これらのサイトでは、実在する人物の写真や経歴が無断で使用され、あたかもその人物が投資を推奨しているかのように装います。インターネットユーザーが興味を持ってリンクをクリックすると、LINEへ誘導され、さらに一対一のトークやグループトークに誘い込み、最終的に高額な投資を持ちかけます。
鳥海氏の画像が悪用されたフェイク広告「鳥海翔の株式クラブ」の事例では、所在地を港区東新橋の汐留ビルディングとしながら、郵便番号が全く異なる「334-1217」になっていました。このような矛盾点に一般の人が気づくことは難しいかもしれませんが、偽サイトには必ず何かしら不審な点が存在します。
見分け方のポイントとして、鳥海氏は「HP内の日本語が不自然な場合が多い」と指摘します。日本人であればまず使わないような言い回しや、「です」「である」が混在する文章などが典型的な例です。さらに分かりにくい例としては、助詞の使い方が不自然で、「あなたの口座は利用停止がされました」といった表現です。本来であれば「あなたの口座は利用停止されました」と記載するのが自然な日本語です。
SNS投資詐欺とロマンス詐欺の脅威
SNSなどを介して誘導される投資詐欺も深刻な問題となっています。「この情報を知っている人だけが儲かります!」「元本は保証します」といった甘い言葉で、広告を通じてターゲットにアプローチするところから始まります。SNSの広告でも、著名人や有名な企業を偽っているケースが非常に多く見られます。
これを信じてしまったユーザーは、まず数万円から10万円程度の少額投資を持ちかけられます。これが巧妙な罠の第一段階です。詐欺師たちは、約束通りに配当を数回支払うことでユーザーを完全に信用させます。その後、「ご覧の通り安心ですから、もっと投資してみませんか?」と誘いかけてくるのです。この段階になると、ユーザーはすっかり詐欺師の言葉を信じ込み、数百万円、あるいは数千万円といった大金を投じてしまうことになります。
また、SNSでは、恋愛感情を利用して金銭を騙し取る「ロマンス詐欺」も流行の手口です。相手がお金の話をしてきた場合は、まず疑ってかかることが非常に重要です。
詐欺被害を防ぐための心構え
特殊詐欺の手口は日々進化し、見破ることが困難になっています。本物の警察署の電話番号を偽装するなりすまし電話から、有名人を騙る偽サイト、甘い言葉で誘い込むSNS投資詐欺、そして恋愛感情を利用するロマンス詐欺まで、その種類は多岐にわたります。これらの詐欺から身を守るためには、常に最新の手口を知り、何よりも「疑う心」を持つことが重要です。見知らぬ人からの金銭に関する話や、投資で「絶対儲かる」「元本保証」といった言葉には、細心の注意を払い、安易に信用しないよう心がけましょう。少しでも不審に感じたら、すぐに家族や警察、消費者ホットライン(188)に相談してください。
参考文献
- 鳥海翔の騙されない金融学: YouTubeチャンネル
- 警察庁: 令和6年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値版)
- J-CAST会社ウォッチ: ヤフーニュース(元の記事提供元)