安倍晋三首相は23~27日の日程でフランスを訪問し、24日に仏南西部ビアリッツで開幕する先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)に出席する。イランの核開発を制限する2015年の核合意や貿易問題でG7各国の主張が食い違う中、国際社会で存在感を増す安倍首相は議論を主導できるか。(小川真由美)
「今回は危機感が非常に強い」。政府関係者は今回のG7について話す。今年のG7議長国である仏マクロン大統領の意向で、「コミュニケ」と呼ばれる首脳間合意の成果文書は作成しない可能性が浮上しているためだ。実際にコミュニケを作成しないとなると、1975年の第1回G7以来、史上初めてとなる。
前回のG7では、トランプ米大統領が決めた鉄鋼とアルミニウムの関税引き上げ交渉でトランプ氏と欧州各国が対立した。成果文書に盛り込む細かい表現をめぐって激論となり、トランプ氏がG7で孤立する「G6+1」の様相が強まる中、自由で公正な貿易の重要性を訴えた安倍首相の“鶴の一声”で議論が収束に向かった経緯がある。
外交筋によるとマクロン氏は、成果文書作成に労力を割くよりも、首脳同士の率直な議論を優先したい考えだ。ただ、G7の成果文書に法的拘束力はないものの、首脳間が合意する国際約束は大きな意味を持つ。民主主義や法の支配など価値観を共有するG7の結束が揺らいだとみられれば、知的財産など国際ルールを無視する中国やミサイル発射を強行する北朝鮮に付け入る隙を与えかねない。