（写真：五ノ井さんが福島地裁前で報道陣の取材に応じる）
陸上自衛隊の郡山駐屯地（福島県郡山市）に所属していた元自衛官、五ノ井里奈さん（24）が強制わいせつ罪に問われている事件で、元自衛隊員の3被告に対する判決が12日に福島地裁（三浦隆昭裁判長）から言い渡される予定です。この判決において争点となるのは、強制わいせつが行われたかどうかという点です。検察側は、3被告に対してそれぞれ懲役2年の刑を求刑しましたが、2022年に3被告が五ノ井さんに直接謝罪した際には、「笑いを取るためだった」と無罪を主張しています。
強制わいせつ罪の争点
事件の被告となっているのは、当時3等陸曹であった渋谷修太郎（31）、関根亮斗（29）、木目沢佑輔（29）の3人です。
起訴状によれば、3被告は2021年8月3日の夜、北海道の陸上自衛隊の演習場で、格闘技の技を使って五ノ井さんをベッドに倒し、衣服を着た状態で自分たちの下半身を彼女の下半身に接触させたとされています。
検察側は、3被告が五ノ井さんを押し倒して腰を振った行為は、性的な意図や下半身の接触があったかどうかに関わらず、わいせつ行為に当たると指摘しました。検察官は、「宴会の席を盛り上げるためという自己中心的で、被害者の尊厳を顧みない身勝手な動機で犯行に及んだ」と述べました。
一方、弁護側は最終弁論で、3被告が飲み会の席で技をかけたことは認めつつも、下半身の接触は否定しました。渋谷被告は、「技をかけるよう指示されてやったが、誰も反応しなかったから腰を振って笑いを取ろうとした」と話しました。
五ノ井さんの証言と訴え
被害者である五ノ井さんは、公判に6回出席し、被害者参加人として証言しました。論告求刑の公判では、証言台で時折声を詰まらせながら悔しさを吐露しました。彼女は「起きている時、寝ている時、柔道をしている時、何をしていても被害の光景が頭から離れない。私の夢や人生の生きがいを奪われた瞬間を忘れることはない」と話し、さらに「私と同じく夢や希望を持つ人たちが同じ被害を受けることがないように、厳しく正しい判決を心から願う」と訴えました。
この事件によって性被害を経験した当事者たちも公判の行方に注目しています。性被害を告発したジャーナリストの伊藤詩織さん（34）は、五ノ井さんの意見陳述を傍聴席で見届け、「自分の話したくない過去について、性被害について、法廷で話すのは身を削るような決断だったと思う。同じような被害を誰にも経験してほしくないという思いを私たちは受けとめていかなければいけない」と語りました。
この判決が性被害問題の重要な判断となることが期待されており、被害者や関係者、一般の人々にとっても大きな意味を持つものとなるでしょう。
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