“管理職”には「残業代を払わない」… 納得できず会社を訴え“912万円”ゲットの内訳

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いわゆる管理職は、残業代をもらえないのか?この仕打ちに納得できず会社を訴えた管理職の事件を解説します。もう既にベストな判決を勝ち取っている林 孝匡弁護士による詳しい解説です。

どんな事件か

登場人物は以下のとおりです。

会社

  • 建築現場へ生コンクリートを搬入するなどを行っている会社

Xさん

  • 【練り】という仕事の責任者
  • 工場長などに次ぐ地位にあった
  • 入社約12年目

ジャッジ

Xさんの完勝です。

裁判所は「会社は残業代538万円を払え。Xさんは管理監督者じゃない」という判決を下しました。

管理監督者って、何?

Xさんが法律上の【管理監督者】にあたれば残業代の請求はできませんでした。管理監督者かどうかは以下の3つを考慮して判断されます。

  • 実質的に経営者と一体的な立場といえるような権限があるか
  • 自分の裁量で労働時間を管理できるか
  • 管理監督者にふさわしい収入か

ここで注意が必要なのは、ちまたの管理職=管理監督者【じゃない】ということです。多くの会社は「チミは管理職になったんだから残業代は出ないよ~」とホザいていますが、間違っているんです。

今回の事件でも裁判所は上記3つの要素を総合考慮して「Xさんは管理監督者じゃねー」と判断しました。

  • 経営者との一体性の有無
    「Xさんは会社が出荷する生コンの、質の良し悪しを決定づける、という意味においてその立場が重視されていたにすぎません。また、Xさんが他の従業員に指示を行う立場にあったことをもってXさんが経営者と一体的な立場にあったともいえません」

  • 勤務時間の自由裁量の有無
    「Xさんが勤務時間に関する裁量を有していたとは認め難い」

  • ふさわしい待遇の有無
    「Xさんが管理監督者として相応の待遇を得ていたとまでは言い難い。年収700万円近くはそれなりに高額だが、他の従業員と比較しても特に高額であったとは認められない」

その結果、Xさんは管理監督者じゃないと判断され、残業代約538万円が認められました。

また、裁判所は「付加金」の支払いも命じました。付加金をいくらにするかは裁判所のサジ加減一つなのですが、今回は最大の倍返しでしたね(一部除斥期間にかかってしまったので約374万円です)。すなわち、裁判所は残業代538万円+付加金374万円=912万円の支払いを命じました。

これは押さえておいてください。管理職=法律上の管理監督者【じゃありません】。多くの管理職は残業代を請求できると思います。

相談するところとしては、労働局に申し入れる方法があります(相談無料・解決依頼も無料)。また、社外の労働組合か弁護士に相談することもおすすめです。

今回は以上です。これからも労働関係の知恵をお届けします。またお会いしましょう!