大きな成果と逃したチャンス-。8月末に東京都知事として初めて訪中した小池百合子知事。中国が国家の威信をかけて開発を進めるハイテク産業を視察し、都の政策に反映させようと豊富な収穫を得た。一方で、大規模デモの影響で予定していた香港訪問を中止。香港では来る五輪・パラリンピックを前に国際都市としての東京をアピールする計画だっただけに、絶好の外遊の機会を逸したともいえる。(天野健作)
北京での歓待
「産経さんも、来られてよかったですね」。知事からそうねぎらわれた。これまで中国では本紙の取材が意図的に何度も妨げられてきた経緯があるからだ。今回は都市間交流ということもあり、同行取材の中で当局から圧力を受けるような機会は一度もなかった。ただ同行した他社の記者は1カ月の滞在許可が出たにもかかわらず、私の場合は1週間だけ…。なぜ対応が分かれたかはわからない。
初日、知事の訪中は北京市共産党委員会から始まった。建物には通路の区切りごとにチャイナドレス姿の若い女性が整然と居並び、熱烈な歓待姿勢がうかがえた。
北京では2022年に冬季五輪・パラリンピックを迎える。その組織委員会トップの蔡奇(さい・き)氏との会談は、東京大会との連携という意義付けがあった。蔡氏からは「2008年北京五輪の施設を再利用する」との説明も。開催に巨額な費用がかかり立候補都市が減少し、国際オリンピック委員会(IOC)が五輪改革を進める中で、両者は五輪やパラリンピックへの準備を知恵を募って、地球に優しい持続可能性の観点で推し進めることで一致した。