トランプ氏「ゼレンスキー氏は戦争を未然に防げなかった」
アメリカ大統領選の共和党候補であるドナルド・トランプ前大統領は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がロシアによるウクライナ侵攻を未然に防げなかったと主張し、ウクライナ側にも責任の一端があると示唆しました。
巨額の支援金とゼレンスキー氏のセールスマンシップ
トランプ氏は、人気ポッドキャスト番組「PBD Podcast」に出演し、ゼレンスキー大統領を「私がこれまで見た中で最も優秀なセールスマンの一人」と評し、アメリカがウクライナに提供している巨額の支援金に触れました。「アメリカは、彼が来るたびに1000億ドル(約14兆9000億円)を与えている。歴史上、これほどの大金を手にした人物が他にいるだろうか?」と語り、ゼレンスキー大統領の資金調達能力の高さを指摘しました。
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戦争回避の責任はゼレンスキー氏に?
しかし、トランプ氏は「だからといって、彼を助けたくないわけではない。私はあの人たち(ウクライナ国民)を大変気の毒に思っているからだ。」と前置きした上で、「彼はあの戦争を決して始めさせてはならなかった」と発言。ゼレンスキー大統領にも戦争回避の責任があったとの見解を示しました。
バイデン政権への批判とトランプ陣営の釈明
さらにトランプ氏は、民主党のジョー・バイデン大統領がウクライナ紛争を「扇動した」と非難。自身の発言の真意について、トランプ陣営はAFPの取材に対し、トランプ氏がウクライナ紛争の責任を非難したのはゼレンスキー氏ではなく、「明らかにバイデン氏だ」と釈明しました。
ウクライナの犠牲者数とアメリカの支援
ロシアによるウクライナ侵攻は2年以上が経過し、多くの犠牲者が出ています。ウクライナ側は、国民の士気低下を懸念し、正確な戦死者数を公表していません。しかし、アメリカの有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、両国の死傷者数を合わせると100万人を超えると報じています。アメリカはウクライナにとって最大の支援国であり、侵攻開始以来、641億ドル(約9兆6000億円)以上の軍事支援を行っています。
トランプ氏の発言に専門家から批判の声
トランプ氏の発言に対し、アメリカのシンクタンク「大西洋評議会」のジョン・サイファー氏は、自身のSNSに「なんて卑劣な裏切り者だ」「彼はばかだ。なぜこれほど多くのアメリカ人がそれに気づかないのか、世界中が不思議に思っている」と投稿し、トランプ氏を痛烈に批判しました。
まとめ
今回のトランプ氏の発言は、ウクライナへの巨額の支援に対する疑問や、戦争の長期化によるアメリカ国民の厭戦気分を背景に、一定の支持を得るとみられています。しかし、その一方で、国際社会におけるアメリカの指導力低下を招きかねないとの懸念も広がっています。