ウクライナへの派兵は「危険な賭け」?金正恩氏、外貨稼ぎと体制不安の狭間で苦悩か

経済制裁下で苦しむ北朝鮮、活路を見出すも新たな問題に直面

ウクライナ政府が北朝鮮によるロシアへの派兵を公式に認め、金正恩委員長の思惑が注目されています。経済制裁下にある北朝鮮にとって、今回の戦争は貴重な外貨獲得の機会となっています。しかし、その一方で、大規模な人員派遣は体制の弱体化に繋がる可能性も孕んでおり、「危険な賭け」という見方も出ています。

外貨獲得の手段としてのウクライナ派兵、その実態とは?

韓国政府関係者やウクライナ現地の報道によると、北朝鮮は昨年9月以降、ロシアとの人員交流協力を強化し、これまでに約1万人の軍関係者をウクライナに送り込んだとされています。この中には戦闘要員だけでなく、民間労働者や留学生なども含まれており、「ビザロンダリング」の可能性も指摘されています。

海外への労働者派遣は、北朝鮮にとって主要な外貨獲得手段の一つです。国連の報告書によると、北朝鮮はこれまでに年間7億5000万ドルから11億ドルもの外貨を稼いできたと推定されています。しかし、国連安保理決議により多くの国が北朝鮮労働者の雇用を禁止しており、中国も新規ビザの発給を制限しているため、ロシアへの依存度が高まっているのが現状です。

altalt

派遣された若者たちの不満、体制崩壊の火種となるか?

しかし、専門家の中には、今回の派兵が北朝鮮にとって「危険な賭け」になる可能性を指摘する声も上がっています。

統一研究院のホン・ミン研究員は、「北朝鮮軍の主力は1990年代から2000年代生まれで、実際の戦闘経験がない市場経済に慣れ親しんだ世代だ。自分たちが稼いだ外貨が政権に流れていくことに不満を抱けば、軍内部の亀裂、ひいては体制の弱体化に繋がりかねない」と警鐘を鳴らしています。

実際、ウクライナの現地メディアでは、すでに北朝鮮兵士18人が部隊を離脱したという報道も出ています。

外部世界との接触は避けられず、帰国後の影響も懸念

たとえ厳格な選抜手続きを経て派遣されたとしても、海外に出れば外部世界の情報に触れることは避けられません。自由な文化に触れた若者たちが帰国後にどのような影響を与えるのか、北朝鮮当局にとって大きな懸念材料となっています。

核開発の進展も、国際社会の懸念を高める要因に

一方、北朝鮮の核開発も進展を続けています。英国のシンクタンク「王立防衛安全保障研究所(RUSI)」は、北朝鮮が最大で年間200個の核弾頭を新たに製造できる可能性があると指摘しています。

外貨稼ぎと体制維持の板挟み、金正恩氏の決断は?

外貨獲得のためにロシアへの派兵を続けるか、それとも体制不安の高まりを懸念して派遣を縮小するか、金正恩委員長は難しい決断を迫られています。今後の動向に注目が集まります。