トランプ政権が、米国内に生産施設を建設する半導体メーカーに対し、補助金と引き換えに会社株式の取得を検討していることが明らかになりました。当初、工場誘致による半導体エコシステム復活を目的として無償で支給されていた補助金が、株式投資へと転換される可能性があり、半導体業界に大きな波紋を広げています。これは、経営難に陥っているインテル支援の一環として同社株式10%の取得を目指した動きが、米国に投資する全ての国内外半導体メーカーに拡大された形となります。
米政府、インテル支援から海外メーカーへ戦略拡大
19日のロイター通信の報道によると、ラトニック米商務長官は、半導体支援法(CHIPS法)に基づいて補助金を受け取り、米国に工場を建設する半導体メーカーの株式を米政府が取得する案を検討していると報じました。対象となるのは、米国企業のインテルやマイクロンに加えて、韓国のサムスン電子、SKハイニックス、台湾積体電路製造(TSMC)など、対米投資を表明している世界的な半導体メーカーです。
サムスン電子が米テキサス州テイラーに建設中の半導体工場全景。CHIPS法補助金と株式取得の議論が交わされる中で、巨大な対米投資の象徴となる
一国の政府が自国の企業だけでなく、海外企業に対しても「補助金と引き換えに株式を差し出せ」と要求することは前例がなく、半導体支援法の補助金を信頼し、米国で数十兆ウォン規模の工場建設を進めてきた各半導体メーカーは深い混乱に陥っています。補助金を受け取って株式を引き渡せば、米政府による直接的・間接的な経営干渉が懸念されます。一方で、要求に応じなければ数兆ウォンに達する補助金を放棄しなければならないというジレンマに直面しています。さらに、トランプ政権が近く発表するとされる最大300%の半導体関税措置を考慮すると、米国への工場建設を断念することも困難な状況です。韓国科学技術院(KAIST)の金楨浩教授は、「米国が自国の半導体産業において、自国企業、外国企業を問わず、確固たる主導権を握り、影響力を行使するという宣言とみられる」と指摘しています。【グラフ】半導体企業向け米補助金の規模
株式取得の「二つの大義」:利益確保と国家安全保障
ラトニック米商務長官は19日、CNBCとのインタビューで、この動きの背景にある意図を明らかにしました。「トランプ大統領は米国が取引の恩恵を受けるべきだと判断している。なぜ時価総額1000億ドルの企業(インテル)にそんな資金(補助金)を与えなければならないのか」と述べ、補助金の見返りとして株式を取得することは、米国の直接的な利益確保につながると強調しました。
また同長官は、「我々は自ら半導体を作らなければならない。米国から9500マイル(約1万5000キロ)離れており、中国と80マイル(約130キロ)しか離れていない台湾に依存することはできない」とも言及し、国家安全保障の強化、特に半導体サプライチェーンの国内回帰と台湾依存脱却という二つの名分を明確にしました。これは、米国が半導体産業における確固たる主導権を確保し、その影響力を強固にするための戦略的な動きと言えるでしょう。
まとめ
米国政府による半導体補助金と引き換えの株式取得検討は、世界の半導体メーカー、特に米国に巨額の投資を行ってきた企業に大きな課題を突きつけています。この前例のない政策は、経済的利益と国家安全保障という二つの側面から米国の半導体産業支配を強化する狙いがあり、今後の国際的なサプライチェーンと企業戦略に長期的な影響を与えることになりそうです。各社の対応と、トランプ政権の最終的な決定に世界の注目が集まります。