【大阪王将ナメクジ事件】告発者の男に有罪判決。「勇気ある告発」が“偽計業務妨害”になった理由とは?

2022年7月、宮城県仙台市の「大阪王将 仙台中田店」で「ナメクジ大量発生」の告発がSNSで拡散し、大きな騒動となりました。

その後、告発内容は虚偽だったとして、元従業員の男性が偽計業務妨害の罪で起訴され、注目を集めました。

本記事では、本件の裁判経過や判決内容、そして「勇気ある告発」がなぜ「偽計業務妨害」とされてしまったのか、その理由について解説していきます。

大阪王将ナメクジ事件とは?

2022年7月、当時「大阪王将 仙台中田店」で勤務していた元従業員の男性が、店内で「ナメクジが大量発生している」という内容の告発をSNS上で行いました。

告発は瞬く間に拡散され、メディアでも大きく取り上げられる事態に。

その後、運営会社が調査を行った結果、「ナメクジが大量発生していた事実は確認されなかった」と発表。

男性は、虚偽の情報で業務を妨害したとして、偽計業務妨害の疑いで逮捕されました。

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裁判で明らかになった告発の動機と判決内容

仙台地裁で行われた裁判では、男性の告発の動機や、実際にナメクジが大量発生していたのかどうかが争点となりました。

検察側は、男性が勤務態度を注意されたことに腹を立て、会社への復讐を目的として、虚偽の告発を行ったと主張。

一方、男性側は、ナメクジの大量発生は事実であり、告発は正当な行為だったと反論しました。

しかし、裁判所は男性側の主張を認めず、2023年5月、偽計業務妨害罪の成立を認め、懲役1年6ヶ月、執行猶予4年の有罪判決を言い渡しました。

なぜ「偽計業務妨害」とされたのか?

本件で注目すべき点は、たとえ告発内容が事実だったとしても、告発の方法によっては「偽計業務妨害」が成立する可能性があるということです。

刑法における「偽計」とは、人を欺く行為全般を指し、必ずしも嘘をつくことだけを意味しません。

つまり、告発内容が事実であっても、社会通念上許されない方法で告発を行った場合、偽計業務妨害罪が成立する可能性があるのです。

本件では、男性は告発する前に、会社側に直接申し出たり、労働基準監督署などの公的機関に通報したりするなどの手段をとらず、いきなりSNS上で告発を行いました。

裁判所は、このような告発方法は社会通念上許される範囲を超えており、「偽計」に該当すると判断しました。

公益通報者保護制度との違い

内部告発を行う際、「公益通報者保護法」に基づいて通報すれば、通報者は保護の対象となります。

しかし、本件では男性は公益通報者保護法に基づいた通報を行っていなかったため、保護の対象外となりました。

公益通報者保護法の利用には、通報対象となる行為や通報窓口などが法律で定められています。

SNSでの告発は、公益通報者保護法の要件を満たしていないため、保護の対象とはならない点に注意が必要です。

まとめ

大阪王将ナメクジ事件は、告発の方法によっては、たとえ告発内容が事実であっても、偽計業務妨害罪が成立する可能性があることを示す事例となりました。

内部告発を行う際には、感情的に行動するのではなく、まずは適切な窓口に通報するなど、冷静な対応を心がけることが重要です。