日銀総裁・植田和男氏を揺さぶる石破茂氏の真意とは?

新総理就任直後、早くも金融政策に波紋?

新総理大臣に就任した石破茂氏の言動が、早くも日本銀行を揺るがせています。就任翌日、植田和男日銀総裁との会談で飛び出した「追加利上げは不要」発言。さらに、日銀審議委員の野口旭氏も「利上げは慎重に」と追随する姿勢を見せ、波紋が広がっています。

植田和男日銀総裁植田和男日銀総裁

10年間続いた黒田時代の大規模金融緩和からの脱却を目指す植田総裁にとって、新政権からのこれらの発言は、まさに逆風と言えるでしょう。

リフレ派の殿堂、野口氏の存在

日銀ウォッチャーの間では、野口氏の動向に注目が集まっています。2021年4月、黒田前総裁の任期満了1年前に政策委員会審議委員に就任した野口氏は、「最後のリフレ派」として知られる経済学者です。

東大経済学部出身、大学院進学というエリートコースを歩みながらも、博士課程は単位取得退学。その後は専修大学で教鞭を執るなど、異色の経歴の持ち主でもあります。

“密会”のあと「黒塗りの高級車」に乗り込む日銀総裁“密会”のあと「黒塗りの高級車」に乗り込む日銀総裁

リフレ派の旗手として

野口氏は、2003年に早稲田大学の若田部昌澄教授らと共著で発表した経済学者批判の本で注目を集めます。翌年には、リフレ派の論客として知られる岩田規久男氏が編著した「昭和恐慌の研究」にも参加。この頃から、リフレ派の有力メンバーとしての地位を確立していきます。

「昭和恐慌の研究」は、昭和恐慌の原因は極端な緊縮財政にあったと主張し、大きな反響を呼びました。そして、その後の黒田日銀による大規模金融緩和へと繋がっていくことになります。

植田総裁への牽制か?

しかし、10年におよぶ大規模金融緩和にもかかわらず、目標としていた2%のインフレ目標は達成できず、リフレ派は日銀から去っていきました。残されたのは、野口氏ただ一人。

「野口氏は、リフレ派の殿(しんがり)を守っているのです」(経済ジャーナリスト)

今回の発言は、新総裁への牽制とも取れるだけに、今後の金融政策に与える影響は小さくなさそうです。