日本の高齢社会において、60歳を過ぎても多くの方が働き続けています。内閣府の最新統計によると、特に60歳から64歳の男性では8割以上が就業しており、この傾向はさらに上の年代でも顕著です。なぜ多くのシニアが働き続けるのでしょうか?そして、その背景にはどのような理由や思いがあるのでしょうか?本記事では、公的な統計データや意識調査を基に、高齢者の就業実態とその多様な動機に迫ります。
高齢者の就業状況に関する公的統計
内閣府が公表した令和5年版高齢社会白書によれば、55歳以上の就業状況は以下の通りです。60~64歳男性は83.9%、女性62.7%、65~69歳男性は61.0%、女性41.3%、70~74歳男性は41.8%、女性26.1%がそれぞれ就業しています。年代が上がるにつれて就業率は緩やかに低下しますが、70代前半でも男女ともに一定割合の人が働いています。女性の就業率は男性に比べてやや低い傾向があります。このデータは、多くの高齢者が就業を継続している現実を示しています。
シニア世代が働き続ける「本音」と動機
シニアが働き続ける動機を探るため、スタッフサービス・ホールディングスが2022年10月に実施した調査を見てみましょう。「今後も働きたいか」との問いに「働きたい」42%、「働きたくない」58%と回答。この「働きたくない」が過半数を占める背景には、シニアを取り巻く厳しい労働環境や、「この年齢で好き好んで働いているわけではない」という切実な思いが反映されていると考えられます。
一方、「働きたい」理由の上位は「お金を稼ぎたい」(58.1%)、「健康を維持したい」(49.5%)、「社会とのつながり」(41.9%)、「生きがい」(24.8%)でした。経済的理由が筆頭ですが、健康、つながり、生きがいといった非金銭的要素も、シニアの就業継続の重要な動機となっています。
日本で働く高齢者。デスクで書類やパソコンに向かうシニア。
内閣府の統計と意識調査から、日本のシニア世代の高い就業率とその多様な動機が明らかになりました。経済的な必要性が大きい一方、健康維持や社会とのつながり、生きがいも理由として挙げられます。しかし、半数以上が「働きたくない」と感じており、厳しい労働環境や経済状況が背景にあることも見逃せません。今後、シニアが自身の希望に合った働き方を選べる社会の実現が課題となります。
参考文献
内閣府 令和5年版高齢社会白書
スタッフサービス・ホールディングス 2022年10月実施「60歳以上の就労意識と企業の雇用実態に関する調査」
山口一夫氏著 『シニアライフの人生設計』(ごきげんビジネス出版)