ハマス指導者シンワル氏の最期、ガザ地区住民の目に映る「英雄」像とは?

イスラエル軍による殺害作戦から一夜明け、ハマス最高指導者ヤヒヤー・シンワル氏の最期の姿がガザ地区住民の間で波紋を広げている。イスラエル国防軍が公開した映像には、負傷しながらも抵抗するシンワル氏の姿が捉えられており、その死を「英雄的」と称える声が上がっているのだ。

シンワル氏の死、英雄か?それとも…?

10月16日、イスラエル軍との銃撃戦の末、シンワル氏は死亡した。公開された映像には、砲撃で破壊されたアパートの一室で、ドローンに向かって棒を振りかざす彼の姿が。この映像はガザ地区住民に衝撃を与え、賛否両論を巻き起こしている。

「息子に毎日見せる」 彼の死に誇りを感じる住民たち

ガザ地区に住むアデル・ラジャブさん(60歳)は、「シンワル氏は最後まで戦い抜いた真の英雄だ」と語る。30歳のタクシー運転手アリさんもまた、「これほど立派な死に方はない。息子や孫にも見せていきたい」と、シンワル氏の死に強い感銘を受けたようだ。

生前のシンワル氏は、「イスラエルに殺され殉教者となることが最高の贈り物」と語っていたという。彼の言葉は今、パレスチナの人々の間で再び注目を集めている。

[ハマス指導者シンワル氏の最期、ガザ地区住民の目に映る「英雄」像とは?

ガザ地区で撮影された、破壊された建物の瓦礫。イスラエル軍とハマスの戦闘が激化する中、街は壊滅的な被害を受けている。(2024年 ロイター)]

ハマスへの志願者増加の可能性も? シンワル氏の死がもたらす影響

一方、シンワル氏の死がさらなる憎しみを生み、ハマスへの志願者を増やすのではないかと懸念する声も上がっている。4児の母であるラシャさん(42歳)は、「指導者は前線に立ち、戦うもの。シンワル氏はまさにその象徴だった」と語り、彼の死が若者に与える影響の大きさを示唆した。

戦争長期化の懸念、そして未来への不安

しかし、9月に行われた世論調査によると、ガザ地区住民の大多数は今回のイスラエルによる奇襲攻撃を「誤った決断」と考えていることが明らかになっている。戦争の長期化による被害拡大は避けられず、住民たちの間には、シンワル氏が始めた戦いの結末を案じる声が広がっている。

ヨルダン川西岸ヘブロンに住むアラー・ハシャルムーンさんは、「指導者が誰であろうと、イスラエルとの対立は終わらないだろう」と、今回のシンワル氏の死が現状を変えることにはならないだろうと予測する。

ラマラのムラド・オマルさん(54歳)もまた、「戦争は続き、すぐに終わるとは思えない」と、将来への不安を口にした。

シンワル氏の死は、ガザ地区住民に複雑な思いを抱かせている。英雄と称える声がある一方で、彼の決断がもたらした結果に苦悩する人々の姿も。イスラエルとパレスチナ、両者の溝は深く、和平への道のりは依然として険しい。