古代エジプト文明をも苦しめたマラリア、ついに終焉
世界保健機関(WHO)は2023年10月20日、エジプトをマラリア撲滅国として公式に認定しました。WHOのテドロス・アダノム事務局長は、「マラリアはエジプト文明と同じくらい古い病気だが、かつてファラオを苦しめたこの病気が、もはや未来の脅威ではなくなったことは歴史的な出来事だ」と述べています。
エジプトの資料写真
マラリアとは?その脅威と撲滅の道のり
マラリアは、マラリア原虫に感染した蚊に刺されることで感染する急性熱性疾患です。世界中で年間2億人以上が感染し、約50万人が命を落としています。
WHOからマラリア撲滅国として認定されるには、3年以上連続で国内でのマラリア発症例がなく、感染症に迅速に対応できる医療体制が整っていることが条件となります。
エジプトにおけるマラリアとの闘い:古代から現代まで
エジプトにおけるマラリアの歴史は古く、紀元前4000年前まで遡るとされています。ツタンカーメン王もマラリアに苦しんでいたことが、ミイラの遺伝子分析によって明らかになっています。
エジプトのファラオ・ツタンカーメンのミイラに対する遺伝子検査当時の様子
エジプトは1920年から約100年間にわたり、マラリア対策に取り組んできました。1930年にはマラリアを法定感染症に指定し、本格的な対策に乗り出しました。しかし、第二次世界大戦中には感染が急増し、1969年のアスワン・ハイ・ダム建設によって蚊の繁殖地が拡大するなど、苦難の道のりでした。
それでもエジプトは、媒介蚊の駆除や公衆衛生監視事業など、疾病対策を強化。2014年にアスワン州で発生した小規模な感染を最後に、発症例ゼロを維持してきました。
エジプトの快挙、世界に希望を灯す
エジプトは、アラブ首長国連邦(UAE)とモロッコに続き、東部地中海地域で3番目のマラリア撲滅国となりました。WHOによると、世界でマラリアが撲滅された国はこれで44カ国になります。
エジプトの成功は、マラリアに苦しむ他の国々にとって大きな希望となるでしょう。