新政権発足後、即解散・総選挙に踏み切った石破茂新首相。各地で慌ただしく戦いへの準備が進む中、15日に公示日を迎えた。裏金問題が尾を引く与党・自民党、野田新代表で巻き返しを図りたい野党・立憲民主党。候補者たちは目がギラギラ。現場は熱気ムンムンだ。衆議院議員選挙2024、その注目選挙区の人間模様をナマ取材した!【衆院選”人間激場”注目選挙区全力ルポ 和歌山2区】
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政界を引退した二階俊博元自民党幹事長の三男・伸康氏(46歳)と、裏金問題で自民を離党した世耕弘成(ひろしげ)前参院議員(61歳)が激突し、保守分裂の「紀州戦争」となった和歌山2区。
「二階王国」と呼ばれ、父の強固な地盤を受け継いでの出馬だけに、伸康氏が世耕氏に競り勝つとの観測しきりだったが、直近の世論調査では「世耕氏有利」とのデータが。
「二階さんは長らく県内の公共事業を差配してきた。そのため、二階さんに世話になった土建業者がさまざまな業者に『二階陣営に投票しなかったら仕事を回さない』と脅すようなことも珍しくなかった。
そんな土建屋だけが潤う二階氏のパワハラ政治への反発が、俊博氏の引退で表面化し、世耕支持へと流れているんです」(和歌山県の自民関係者)
二階父子の本拠地である御坊(ごぼう)市を歩いても伸康候補のポスターは意外なほど少ない。むしろ、地縁の薄いライバル・世耕氏のポスターのほうが目立つくらいだ。市内の商店主がこう言う。
「二階さんが御坊市は自分の王国と言わんばかりに好き勝手するから、自民は二階派、反二階派に分裂して久しい。2019年の県議選では反二階派が二階派の候補を嫌って共産候補にこぞって投票したら、そちらが当選したほど。
御坊市ではそれほど二階さんは嫌われている。それは三男に対しても同じこと。そうした悪感情が世耕有利のデータとなっているのでしょう」
選挙区の変更も世耕氏に有利に働いているようだ。小選挙区の10減10増に伴い、俊博氏の選挙区だった和歌山旧3区は旧2区の一部と統合されることに。
そのため、二階陣営はこれまで土地勘のなかった旧2区の海南市、橋本市などの票も掘り起こさないといけなくなってしまった。
一方、和歌山全県区の参院議員だった世耕氏は県内のすべてのエリアにもれなく事務所を置いて地元活動に取り組んできた。
「旧2区を遊説する二階陣営関係者も『全県区の世耕さんには参院選で票を投じたことがあるけど、旧3区だった二階さんには一度も投票したことがなく、なじみがないと言われて苦戦中』とこぼしていました」(前出・自民関係者)
キャリアの差も歴然だ。旧安倍派5人衆と呼ばれ、経産大臣、自民党参院幹事長などの要職も務めた世耕氏は議員歴26年のベテラン。対する伸康氏は新人で議員経験はゼロだ。有権者にすれば、頼りになるのは世耕氏と評価してもおかしくない。
ただ、伸康氏にも有利な点はある。それは15日に田辺市での出陣式で見せた若さと熱気。とにかく会場内を走り回り、誰彼となく握手して頭を下げる。挙句はビール箱でしつらえた演壇に駆け上がり、マイクなしで「私には夢がありま~す!」と大演説。
これには居合わせた有権者も「熱量がすごい。特にあえてマイクも使わずに地声だけで演説をぶち始めたときはすごいなと思わずうなってしまった」と感動の様子だった。
和歌山2区ではほかに立憲の新古(しんこ)祐子氏(52歳)、共産の楠本文郎(ふみろう)氏(70歳)、諸派の高橋秀彰(ひであき)氏(42歳)が出馬する。保守分裂の「紀州戦争」を制し晴れて議員バッジをつけるのはいったい誰なのか?
取材・文・撮影/ボールルーム