冬眠しない子グマが急増中!危険な出没と背景にある原因とは

近年、日本各地で「冬眠しないクマ」、通称「穴持たず」の目撃情報が相次いでいます。特に懸念されているのが、冬眠するはずの時期に活動している子グマの急増です。これは人里でのクマとの遭遇リスクを高め、人身被害にもつながっています。専門家は、この異常な状況の背景には深刻な環境変化と人間の活動が影響している可能性を指摘しています。本記事では、各地で報告されている子グマの出没状況と、その背後にある原因を詳しく掘り下げていきます。

各地で相次ぐ「冬眠しない子グマ」の目撃と人身被害

富山市での悲劇的な事件は、「冬眠しないクマ」による被害の深刻さを示すものです。12月4日未明、のどかな田園地帯で新聞配達中の高齢夫婦が相次いでクマに襲われ、顔などに重傷を負いました。幸い命に別状はなかったものの、現場には大量の血痕が残されており、襲撃したクマは体長約1メートルで子グマの可能性が高いと報じられています。

冬眠せずに出没するツキノワグマ冬眠せずに出没するツキノワグマ

富山県に限らず、北海道、青森、新潟、長野、山口など、12月に入ってからも各地で子グマの目撃情報が多数寄せられています。岩手県の北上市猟友会会長である鶴山博氏(76)は、「例年であれば11月20日ごろまでにはクマを見かけることはほとんどなかったが、今年は11月下旬から12月にかけても北上市内で複数回目撃され、その全てが子グマだった」と証言しています。特に、小学校敷地内で捕獲された子グマの鋭い爪を見て、幼獣であっても人を傷つける危険性を強く感じたといいます。

山梨県でも深刻な状況が報告されており、昨年11月に33頭だった目撃数が今年は63頭と倍増。中でも子グマ(単体)の目撃数は、昨年11月の7頭から今年は20頭へと約3倍に急増しています。

冬眠行動の変化に潜む深刻な背景

通常、クマは11月後半から3月ごろまで冬眠に入り、この期間の目撃数は大幅に減少します。しかし、今年は「冬眠しないクマ」が全国的に現れ、特に子グマの出没が際立っています。この異常な冬眠行動の変化には、主に二つの深刻な背景が指摘されています。

一つは、ドングリ凶作による餌不足です。鶴山氏によれば、昨年と比較して今年のクマの駆除数が大幅に増加しており、これは秋のドングリ凶作が原因で、食料を求めて山から市街地へ下りてくるクマが増加しているためだと考えられています。クマの出没数が増えれば、それに比例して駆除数も増加するのは避けられない結果です。

もう一つは、親グマの駆除が子グマの冬眠を妨げる可能性です。増加した駆除数の中で、親グマが駆除されるケースも増え、結果として多くの孤児となった子グマが生まれている可能性があります。本来、子グマは親から冬眠の場所の選び方や冬眠の仕方を学びます。しかし、親を失った子グマたちは、この重要な学習機会を奪われ、冬眠できずに冬場も活動を続けているのではないかと専門家は懸念しています。

結論

日本各地で報告されている「冬眠しない子グマ」の増加は、単なる珍しい現象ではなく、自然環境の変化と人間の活動が複雑に絡み合った結果として生じています。ドングリの凶作による餌不足と、それに伴う親グマの駆除が、子グマたちの本来の生態サイクルを狂わせている可能性が高いとされています。私たちは、クマの生態系への理解を深めるとともに、人里でのクマとの共存に向けた具体的な対策を講じ、適切な距離感を保つための注意喚起と情報共有をさらに強化していく必要があります。