衆院選はいよいよ最終盤に突入した。国政での生き残りをかけたレースは、「10・27」のゴールに向けて各候補がラストスパートをかける局面に入った。「政治とカネ」の逆風にさらされる自民党は「最終盤重点区」として全国38の激戦区をリストアップ。石破茂総裁ら党幹部が応援に入って巻き返しを図る。40代の若手同士で「鈴木」の同姓対決となっている「東京10区」などでの運動を強化し、対する野党第一党の立憲も党内の論客を次々と送り込んで、舌戦はヒートアップしている。
自民党にとって大きな痛手となった“赤旗砲”
「あの数字を見たときは正直言ってホッとした。なのに、こんなスキャンダルが出てくるとは…」
投開票まで1週間を切った10月23日、自民党衆院議員のあるベテラン秘書はこうため息を漏らした。秘書が頭を抱えるのはこの日、日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が放ったあるスクープだ。
「裏金非公認に2000万円」。赤旗は同日付の1面記事にこんな見出しをつけた。記事は、「裏金事件」で非公認となった候補が代表を務める党支部に対し、自民党本部が総選挙公示直後に、政党助成金2000万円を振り込んでいたことを報じた。
「赤旗は森山裕幹事長から各支部の会見責任者にあてて送付された『支部政党交付金支給通知書』という文書の中身を報じました。
文書は10月9日付で、この日は党本部が衆院選に向けた1次公認候補を発表した日。『裏金議員』の処遇をどうするのかが注目されていた時期で、党執行部はその一部を非公認にすることを公表していた。
一連の問題に対応する姿勢を見せた形ですが、その裏で処分した候補に選挙前にカネを渡していたことが赤旗の報道によって明らかになったわけです。
この一報は新聞、テレビの各社が一斉に後追いし、SNSでも急拡散されています。投開票直前で新たにカネの問題が出てきたわけで、自民党にとっては相当な痛手となるはずです」(全国紙政治部記者)
ただ、前出の秘書がいっそう肩を落としたのには、もうひとつ理由がある。
選挙戦の最中に自民党が実施した世論調査の結果にようやく明るい兆しが見えていた矢先でのつまずきだったからだ。
「自民党が19日から20日にかけて実施した世論調査で、自民の獲得議席が『220超』と出た。現有の『247』からは20議席あまりを失うが、一部では『200議席を切る』との報道もあっただけに各陣営からは『なんとか踏みとどまれそうだ』と安堵の声も漏れていた。
連立を組む公明も現有の『32』からは減らすものの、小幅な減少にとどまっていた。ラストスパートに向けて気合いを入れ直すための好材料になるはずだったのに、例の〝赤旗砲〟で、その機運も一気にしぼんでしまった」(前出の秘書)