5年ぶりの雪解け? 習近平主席とモディ首相が会談
中国の習近平国家主席とインドのモディ首相が、実に5年ぶりに正式な首脳会談を行いました。長らく両国間の懸案事項であった国境紛争の解決に向け、前進の兆しが見えたことが最大の要因と言えるでしょう。しかし、両国が関係正常化へと舵を切った背景には、それぞれの思惑が渦巻いています。
米中対立の長期化を見据え、インドを取り込みたい中国
これまで中国は、インドとの首脳会談に対して慎重な姿勢を貫いてきました。習近平主席は、昨年8月のBRICS首脳会議でモディ首相と顔を合わせたものの、短時間の立ち話にとどまり、9月のG20サミットに至っては欠席するという異例の対応を取りました。
中国にとって、主権や領土問題は決して譲歩できない「核心的利益」であり、インドとの国境問題は非常にデリケートな問題なのです。
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しかし、ここにきて関係改善に転じた背景には、米国との対立長期化が影を落としていると言われています。米国の対中強硬姿勢は、次期大統領選後も変わらないと予想され、中国を取り巻く環境は厳しさを増しています。
そこで中国は、日米豪印4カ国からなる「クアッド」の一角であるインドを取り込み、対中包囲網に風穴を開けようとしているのです。
さらに、経済的な思惑も見え隠れします。トランプ前大統領が再選を果たせば、対中関税の大幅な引き上げも予想される中、巨大市場であるインドとの経済的な結びつきは、中国にとって大きな魅力となっています。
膨張する対中貿易赤字に悩むインド
一方のインドは、中国との経済関係を正常化させることで、膨れ上がる対中貿易赤字の削減を目指しています。
2020年の国境紛争以降、インドは中国からの投資に対して厳しい規制を設け、中国経済からの分離を加速させてきました。しかし、国内の製造業の弱さが足かせとなり、安価な中国製品の流入を食い止めるには至っていません。
2023年度のインドの対中貿易赤字は約12兆9000億円に達し、貿易赤字全体の約3割を占めています。
こうした状況を受け、インド政府は7月に発表した年次経済報告書の中で、「中国企業に投資してもらい、その製品を輸出する方が効果的」と提言。欧米企業が中国から生産拠点を移す動きが加速する中、インドとしては中国との関係を正常化し、投資を呼び込むことで利益を得ようという思惑が透けて見えます。
実際に、8月には中国の複数の電子機器メーカーによるインドへの投資案件が承認されたと報じられており、国内の業界団体からの圧力が強まっていたとされています。
今後の両国の関係は?
5年ぶりの首脳会談を機に、中国とインドの関係は新たな局面を迎えたと言えるでしょう。しかし、両国には領土問題や経済的な摩擦など、依然として多くの課題が残されています。今回の会談が、両国にとって真に実りあるものとなるか、今後の動向に注目が集まります。