頻繁に見る悪夢が、単なる恐ろしい夢以上の深刻な健康リスクと関連している可能性が示された。新たな研究によると、悪夢を頻繁に見る人は生物学的年齢が早く進んでおり、75歳未満で死亡する早期死亡のリスクが約3倍高まることが明らかになった。
この研究結果は、英インペリアル・カレッジ・ロンドン(UCL)の神経科学者Abidemi Otaiku氏によって、欧州神経学会(EAN 2025、フィンランド・ヘルシンキ)で発表されたものだ。Otaiku氏は、睡眠中の脳が夢と現実を区別できないため、悪夢から覚めた際に心拍数の上昇や発汗、息切れといった「闘争・逃走反応」が引き起こされると説明する。このストレス反応は、覚醒中に経験するものよりも激しい場合があるという。
悪夢の頻度と早期死亡・生物学的年齢の関連
研究では、26歳から74歳までの4196人を対象とした4つのコホート研究のデータが用いられた。対象者は試験開始時に悪夢を見る頻度を自己報告した。生物学的年齢については、研究開始時点でDunedinPACE、GrimAge、PhenoAgeという3種類のエピジェネティッククロックを組み合わせた指標によって評価された。これらのエピジェネティッククロックは、DNAのメチル化パターンに基づいて生物学的年齢を推定する指標である。
悪夢にうなされる人物のイメージ画像 睡眠時のストレス反応
18年間の追跡期間中、227件の早期死亡(75歳未満での死亡)が発生した。解析の結果、悪夢を見る頻度が高いほど、早期死亡のリスクが統計学的に有意に高まることが示された。
週1回以上の悪夢でリスクが約3倍に
特に、試験開始時に悪夢を見ないと報告した群と比較して、週に1回以上悪夢を見ると報告した群では、早期死亡リスクが約3倍高かった(調整ハザード比2.73、P<0.001)。
さらに、悪夢を見る頻度が高い群では、生物学的加齢が加速していることも明らかになった。媒介分析からは、この生物学的加齢の加速が、悪夢の頻度と早期死亡との関連性のうち39%を媒介していることが示唆された。
結論
今回の研究結果は、頻繁な悪夢が単なる心理的な苦痛に留まらず、生物学的な加齢を促進し、ひいては早期死亡のリスクを高める可能性があることを示唆している。悪夢と健康リスクのさらなる解明に向けた研究が期待される。
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