最低賃金1500円は実現可能?経済同友会代表の「払えない企業はダメ」発言が波紋

日本の衆議院選挙で、経済政策の目玉として「賃上げ」が注目されていますね。多くの政党が最低賃金を1500円に引き上げる公約を掲げていますが、経済同友会の新浪剛史代表幹事の発言が大きな話題を呼んでいます。

新浪氏は「最低賃金を払えない企業はダメだ」「払わない経営者は失格」と断言。「できない企業は退出する。払える企業に移るほうが、間違いなく人々の生活は上がる」とし、政府目標よりも早い「3年以内の1500円実現」を要望しています。

中小企業からは悲鳴も…本当に実現可能?専門家の見解は

衆議院選挙における最低賃金に関する公約衆議院選挙における最低賃金に関する公約

しかし、この発言に対しては「中小企業は潰れろということか」「働き口を無くす気か」といった批判の声も上がっています。はたして、最低賃金1500円は本当に実現可能なのでしょうか?経済学者と中小企業経営者の両方の視点から考えていきましょう。

エコノミスト木内氏「最低賃金アップは賃上げ政策ではない」

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野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は、急激な賃上げは経済全体に悪影響を及ぼす可能性があると指摘します。

木内氏は「数年先なのか、10年、20年先なのか。企業はそれぞれのペースで賃上げを行いますが、最低賃金は政府が一律に引き上げます。新浪氏が言う“3年で1500円”を実現するには、毎年10%以上の賃上げが必要となり、物価上昇率が2%の現状では現実的ではありません」と述べています。

さらに、「最低賃金アップは賃上げ政策ではない」と主張。「最低賃金は、低賃金で働く人が生活に困らないよう、格差が広がらないよう、社会政策として設定されたものです。それを全体の底上げに使うのは筋違いです。賃金や物価の動向を総合的に見てから決めるべきです」と、慎重な議論が必要だと訴えています。

また、1500円という数字についても「全国平均1000円が達成されたため、次の目標として500円刻みで設定しただけでしょう」と、根拠の乏しさを指摘しています。

ジャーナリストの堀潤氏も、衆議院選挙の候補者へのインタビューを例に挙げ、「『地域によって家賃や生活水準、産業構造が異なる中で、どうやって一斉に1500円に上げるのか?』という質問に、まともに答えられた候補者はいませんでした。やはり技術的に難しい問題です。政治家の解像度の低さが、無用な議論を生んでいる」と苦言を呈しています。